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未来について話そう

編集長通信3/17



img002.jpg 4月6日の発行に向けて、THE FUTURE TIMES第2号の編集は最終段階に突入しています。

 2号では「一年後の現在地」を特集テーマに、被災地の現在を取り上げます。多くのメディアがこぞって『3.11』の特集を組んでいます。バブルのように、言葉の通り泡のような一過性のものでないことを願います。DOMMUNEで宇川さんがおっしゃっていましたが、「メディアが『3.11』を消費している」側面は否めないと私も感じます。その番組でも特集されていたように、『3.12』、つまり震災後をどう生きていくのかが、当たり前ですが、現代を生きる私たちの課題です。

 特集記事では岩手と宮城の若者たちの取り組みを記事にしました。同時に福島県南相馬の現状と市民のネットワークについての記事も作成しました。福島出身の箭内さんのインタビューは、東京から福島を思うことについて、とても大切な言葉を拾い上げることができたと思っています。

 放射性廃棄物の最終処分場の問題を取り上げた映画『100,000年後の安全』のマイケル・マドセン監督のインタビューも示唆に富む内容でした。

 毎号恒例の「◯◯と未来」の記事は、スペシャルバージョンとして坂本龍一さんが登場します。かなり早い段階から『more Trees』などの取り組みを行ってきた坂本さんのインタビューは若いひとたちにこそ読んで欲しい内容です。そして、作家の西加奈子さん、『murmur』マガジンの編集長である服部みれいさん。西さんからは言葉を綴ることについての心持ちを、服部さんからは現代における女性性の意味と強さ、そして優しさを学びました。

 エネルギーのページは、下水道から生まれるバイオガスを取材しました。取材に際しては、神戸市の神戸市建設局下水道河川部に協力して頂きました。親切な対応に感謝しています。神戸市の「こうべバイオガス」という取り組みは大変ユニークなので、是非、記事を読んでみて下さい。とても面白い記事です。

 記事にも関連しますが、ひとつだけ違う話を。

sm02.jpg 私の故郷である島田市が岩手県の大槌町、山田町の瓦礫の受け入れを正式に表明しました。そのことについては、私の連載に詳しく書きました。

 ツイッターや、様々なブログでデマのような情報が飛び交っています。「島田市のものはもう食べられない」と言った、嘆かわしいとしか言いようのない言葉を書き綴っているひともいます。島田市出身者として、そのような言葉が外野から市民に向けて投げかけられることを、とても残念に思います。

 瓦礫の広域処理の問題については、原発事故のお陰でデリケートな側面が確かに存在しています。(放射能のフォールアウトがなかったor極めて少なかった地域での瓦礫処理には専門家も慎重な姿勢を表明しています。)ただし、島田市を例にとるならば、瓦礫も焼却灰も事故前のクリアランスレベルの100bq/kgを下回るという試験結果が出ました。確かに、震災以後の政府の対応が私たちの猜疑心を増幅させた面はあると思います。ただ、その目ですべての物ごとを見るのは、ちょっと度が過ぎると私は思います。

 環境問題を契機に、偶然にもこの国の一般廃棄物処理場(焼却場)の設備は高性能なりました。もし、ダイオキシンなどの問題が立ち上がっていなかったら、ここまで高性能のバグフィルターが施設に設置されていなかったかもしれません。関東地方の普通ゴミを燃やしただけで、その灰からは高濃度のセシウムが見つかりました。それは、焼却場の集塵施設が優秀だったからです。灰に濃縮されずに環境中に放出されつづけたら、どうだったでしょう。「信じられない」や、やり場のない怒りや悲しみをぶつける相手ではないと、私は思います。

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 この煙突から出ているものは何だと思いますか?

 実は、「煙(けむり)」ではありません。水蒸気なのだそうです。そのくらい、普段から煤塵(ばいじん)の濃度は厳しく管理されているのだという話を伺いました。

「この煙突から出ているものは何だと思いますか?」という問いに対して、それぞれが抱く感情はひとつではないはずです。ただ、数字に目を向ければ、それは数字として一切の感情を排除したようにそこにあるだけです。読み取ることが出来るのは専門家だけです。残念ながら、一般市民としての私たちは、その数値に感情以外のなにかを持たせられる知識を有していません。


2012年03月17日