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台湾「太陽花学運」レポート

■鼎談:私たちが見た「太陽花」―台湾の「太陽花学運」を振り返る― を公開しました!!→記事はこちら

台湾の与党である国民党が中国との「サービス貿易協定(両岸服務貿易協定)」締結を非民主主義的に強行したことに反対する学生運動「太陽花学運」。これは台湾の急速な中国化と経済植民地化への危惧、議会の不透明性などに不満を募らせた市民たちの運動です。3月18日に始まった学生たちによる立法院(台湾の国会にあたる)の占拠(※学生たちは4月10日に退去)、翌日に行われた大規模デモの様子を写真家の狩集武志さんにレポートしていただきました。

写真・文:狩集武志

台湾到着。桃園空港から台北駅。そして、立法院へ。

3月29日。取り敢えず行こう、そして撮らねばと思った。そもそも、この運動は中国・台湾間の市場開放を目指す「サービス貿易協定」の批准に反対する学生たちが立法院(国会)を占拠(3/18~)したことから拡大した。別件での訪台が決まっていた矢先にこの報道。僕が知っている中国語なんて你好(ニイハオ)とか謝々(シェイシェイ)くらいのもので、全く喋れないし聞き取れない。頼りは辛うじて喋れる片言の英語だけだったけれど、内田樹先生による佐藤学先生の台湾レポ(http://togetter.com/li/646735)を拝読し、決意を新たに台湾へと乗り込んだのだった。

台湾に着くと亜熱帯地方特有のあのムンッとする多湿な空気が出迎えてくれた。気温も28℃を差し、日本から羽織ってきていた上着は用なしとなる。到着ロビーに出るとすぐに長蛇の列に遭遇、レンタル携帯電話コーナーだった。それを尻目に観光案内所へ行き、空港や街中での無料Wi-Fi使用の手続きをする。リムジンバス(大体1時間)に乗り、桃園空港から台北駅へと移動。バスを降りると、またあの湿気に襲われた。移動するバスから、立法院近くにバリケードが見え、心がざわついた。

予め見ていた地図によると、台北駅から立法院へは歩いて行けそうな距離だったので徒歩で向かった。歩いていると、ちらほらと運動に参加する人たちとすれ違う(ステッカーやワッペン、ヒマワリのモチーフを身に付けていたりするので大体わかる)。警察もちらほら。立法院に近づくにつれて段々と音が大きく聞こえ、増幅される人の声と拍手。怒りか、悲しみか。

道路を挟んで現場を目の前にし、しばらく外から眺めた。立法院の周りには政府への批判や台湾独立を掲げる旗や看板、新聞の切り抜き、風刺画、この活動への応援メッセージの寄せ書きが書かれた布などが張り巡らされていた。ヒマワリも所々に。沿道には屋台も並び、中には反核のブースも見られた。移動用トイレもあり、一見すると本当に何かお祭りでもしているかのような、そんな雰囲気だ。

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多くの人が外側からタブレットやカメラを向け写真を撮っている。バイクで通りすがる人も写真だけ撮って去っていく。中山南路以外の立法院を囲む道路は車やバイクが入れないようになっており、大きなスクリーンの下にはステージがあって、そこには演説をする人、それを聞き入る人の姿があった。飲み物や食べ物を配り歩く者や、大きな袋を広げゴミを回収する者もいる(ゴミ回収ブースではキチンとゴミの分別もなされていた)。仮設トイレ(トレーラー式の立派なトイレも)も多数並んでいて、しばらく進んだところには、テレビ局の中継車がズラッと並んでいた。

道路の真ん中を見ると人が2、3人通れる幅でずっと導線が引いてあり、緊急用の搬送路として使われるようになっている。あちらこちらで小冊子やこれに関する印刷物も配布されていて、見ると、明日(3/30)実施される大規模デモの案内(場所や時間も載っていた)だった。学生たちはブースの机に突っ伏していたり、椅子に深く腰掛けたりして寝ている者もいる。キャンプ用のテントも張られていて、みんな疲れている様子だ。

携帯が充電できるブースもあった。立法院周りで利用できるフリーWi-Fiの案内もしている(不安定で全く使えなかったけど)。物資を受け取っているテントには、主に飲用水だろう段ボールが山積みだ。ここでは、ある程度活動するには困らない程度のインフラが整っている。

各々の場所で、人々は笑顔だったり深刻な顔だったり、それらに向けて僕はシャッターを切りながら進んだ。レンズを向けると、笑顔で応えてくれたりピースしてくれる者もいたが、怪訝な態度を取られることも多かった。なかには凄い剣幕で向かって来て撮った写真を削除するよう要求してくる者もいた。顔を隠すためか、大きいマスクや帽子、サングラスを装備してる者も度々見かけた。

ある程度、撮影したところで一旦宿に向かう。現場から少し離れると、そこは普通に日常の時間が流れているように思えた。まるで、そこだけが異空間のような、そんな雰囲気だった。

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