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未来について話そう

The Future Times 第2号発行に寄せて


『The Future Times』の第2号の配布が始まりました。

 img002_1.jpgとはいえ、『The Future Times』って何?という人も、きっといるでしょう。Twitterのリンクから辿り着いて記事を読んではみたものの、一体、どこの誰が何のために作っているページなのかが分からない。そういうことは普通に起こり得ることなので、この場でもう一度自己紹介をさせて下さい。

『The Future Times』は有志で作っている「未来を考える」新聞です。スタッフたちは、それぞれ自分の仕事を持っています。普段の生活の中から、自分の時間をこの新聞の制作に「寄付」してくれているのです。休日や空いている時間で、編集と取材を行っています。

 そして、編集長はASIAN KUNG-FU GENERATIONというバンドで活動している私、後藤正文です。




「ミュージシャンが何故、新聞を作っているのか?」

 このような質問を受けることが多いのは事実です。みなさんも、疑問に思っていることだと思います。これについての答えは、正直に言って「作りたいから」としか言いようはありません。ただ、動機やきっかけについては説明できます。

 長い間、私は何らかの創作物を世の中に発することを生業としていますが、日本において、音楽、とくにロックの分野では、社会というものにコミット=接続した表現をすることを避ける向きがありました。特に我々の世代に強かったと感じています。それについての疑問は日々膨らんで行きましたし、自分に対して常々問いかけてきました。自分の作る作品にも影響が出ていきました。

 契機となったのは、このとてつもない震災です。

 はっきりと、これは職業の問題なのではなくて、ひとりの市民として何かをしたいと思いました。震災の前から行っていた様々な準備が、この新聞のために役立ちました。例えば、音楽の歴史についての勉強は、新聞作りのヒントになりました。中世ヨーロッパの吟遊詩人たちが担っていた口頭のニュースペーパーという役割を、形を変えて模倣することを思いつきました。CDやレコードといったメディアに対して考え続けてきたことも、「紙」という媒体を選ぶことに繋がっています。そして、私は原子力発電に対する、かなり消極的な意見表明を2011日の3月8日に自分の日記で行いましたが、そこに対する当時のリアクションや、自分自身の「気づき」の遅さに対する後悔なども新聞作りの動機にはいくらか含まれています。

 前置きが長くなりましたが、この新聞で掲げたいことはとてもシンプルです。

「未来について話そう」たったこれだけのことです。

 下からでも上からでもなく、自分の生活の中から、自分たちの暮らしや、その先にあるものについて考える。調べる。出会う。話し合う。そういうことのきっかけになれば良いなと思います。

 そして、一切をこの画面から取り出さないといけません。身体や肉体といったことについて考えるのも大きなテーマです。例えば、Twitterで出会った情報や人や様々な事柄と、実際に肉体性を持って、ハグするように出会うこと。抱きしめるように体感すること。そういうことも、「紙」という媒体を作りながら探っていこうと思っています。この新聞は実際に、私の何気ないツイートから始まりました。作りながら勉強する、私にとっては全身を使った学びの場でもあります。


 第2号は本日6日より配布です。配布先はリストのページから確認して下さい。そして、実際に街に出て、手にして下さい。多少面倒なこともあるかもしれませんが、探して手に取ってもらうことも、「紙」で発行していることの目的です。

 何度目かの、長い自己紹介、失礼しました。

 みなさんの手元に届き、そしてこの新聞をきっかけに新しい何かが、それぞれの場所で始まることを願っています。

 
2012年04月06日