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未来について話そう

THE FUTURE TIMES 9号の発行に寄せて


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 特別号の発行があったものの、8号から随分と時間が経ってしまいました。

 スタッフそれぞれに生活があり、かつ、それぞれが自分の余暇を持ち寄って、この新聞は制作されています。「継続は力なり」という言葉は、文字通り継続することの重要性を表すとともに、継続することは難しいのだということもまた、表しているのだと痛感します。

 震災直後の、どこかから湧き出た何らかの使命感を燃料に進んでいるうち、心も身体も、どうしたって平素の温度を取り戻してゆきます。「何かをしたい」の頭上から、日々のしなければならないことが降り積もって、歩む足が重くなることもあります。

 そんな季節を経て、なんとか9号を作ることができました。持続可能なペースと、自分たちの表現欲求とを擦り合わせながら、できる限り悪あがきしたいと思っています。

 今号は「新しい価値観」と題して、ユニークな人たちについて特集しました。ロックバンドのCHAIと作家の温又柔さんのロングインタビューと、僕の地元である牧之原のバイオガスプラントを取材しました。

 9号は12月26日から配布されます。年末の配送になってしまいましたので、地域によって多少のタイムラグがあります。お近くに配布先がない方は、随時アップされるWEBの記事もチェックしてみてください。紙面にはない記事も、引き続き制作してゆこうと考えています。

 最後に、紙面の僕の連載「未来について話そう」をここに引用します。



 未来について話そう

 「これだ」という楽曲ができる度に、「たった一曲で世界が変わるんじゃないか」と僕は思う。

 そうした誇大妄想はもろくも崩れて、世間的なヒット作としての評価は受けられずに、いつもがっかりしている。

 けれども、その曲が「ある世界」と「ない世界」のどちらがマシなのかと問われれば、間違いなく「ある世界」を僕は選ぶ。世界を変えられなくても、僕自身は間違いなく、その曲の誕生以前と以後では、何から何まで違う。

 これは音楽だけに限ったことではないと僕は思う。「社会をより良く変えたい」と願っていても、僕らにできることは少ない。

 たとえば、明日らか、誰しもが貧困や差別について考えなくても済むような発明はできない。

 ただ、差別や貧困のない世界を僕らが求めている社会と、求めていない社会とでは、大きな違いがある。どちらがマシかは言うまでもない。

 今後のテーマは「新しい価値観」。言い換えれば、オルタナティブ。

 世の中に履いて捨てるほどあるインスタントな「新しさ」のなかで、温又柔さんやCHAIの面々が持つ「朗らかさ」と「柔らかい強さ」こそが、時代の波風を乗り越えて、誰かの頰を撫でたり、背中を押したりする感触としての「新しさ」を持っていると思う。

 と、書いた側から、疑問に思う。「新しい価値観」ってなんだろう。

 世間的には、全然新しくないかもしれない。ちょっとだけ誇らしく胸を張るだけのことかもしれない。

 けれども、君や僕が昨日まで知らなかったこと、思いもしなかったこと、やってもみなかったこと、それらはずべて、君や僕にとっての新しい何かだろう。

後藤正文
2018年12月26日

THE FUTURE TIMES 特別号


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『THE FUTURE TIMES』の特別号が完成しました。

 最初の号を発行してから6年。「継続は力なり」という言葉が逆説的に表すように、仲間たちと制作している『THE FUTURE TIMES』も、5年目を過ぎてから、「続けることの難しさ」に直面していました。

 それは、モチベーションの問題ではなく、生活や本業など、時間的な制約の問題でした。この新聞は編集メンバーが無償で労力や時間を持ち寄って、「行動を社会に寄付する」ことを目指して、制作してきたフリーペーパーです。

 改めて、持続可能な発行のペースや方法について、再考しなければならないタイミングなのだと僕は考えていました。



 そんななか、『THE FUTURE TIMES』の記事に登場していただいた建築家の竹内昌義さん「暮らし方冒険家」の伊藤菜衣子さんからのお誘いで、日本全国のユニークな活動をしているひとたちを紹介する展示会に、キュレーターのひとりとして参加することになりました。

 展示会の名前は「NIPPONの47人 2017 これからの暮らし方 -OFF-Grid Life」展です。

 住まい、食べもの、エネルギー、働き方、流通、街づくりなどに関わる人たちを紹介する展示会で、渋谷のヒカリエにある『d47 MUSEUM』で10月9日まで行われます。

 その展示会にて、8月25日から『THE FUTURE TIMES』の特別号を配布します。

『THE FUTURE TIMES』の配布の有無に関わらず、「これからの暮らし方」展はとてもユニークな展示会です。47人の活動(『THE FUTURE TIMES』も出展しているので、本当は46人)は、僕たちの暮らしに違った角度からの目線を与えてくれます。

 例えば、僕自身、いくら面白いと思っても、明日からエネルギーを自給するエコハウスには住めません。けれども、そういった暮らし方や方法があるのだということを知るだけで、どこか自分の暮らしまで変わったように感じます。それは、もしかしたら僕もいつか同じようにできるかもしれない、という選択肢が自分の生活に加わるからだと思います。

OGL2.jpg 47人がそれぞれ楽しそうに活動しているところも魅力的です。啓蒙、みたいな雰囲気とは真逆の、好きでやっていることがいつの間にかスタンダードになってしまうような、そんな予感を孕んだ活動ばかりです。

 ユニークな展示会への参加は、初心に立ち返る機会となりました。

 『THE FUTURE TIMES』が掲げているコンセプトのひとつは、「街に出る」ということです。身体のあるメディアに収められた情報を、自分の身体を使って手に入れる。それはネット時代の便利さとは真逆のもの。しかし、不便だけれど、鈍い身体を実際に動かすことで生まれる体験としての強度がある。そんなふうに僕らは考えて、『THE FUTURE TIMES』を紙の新聞として配布しています。

 渋谷の町まで出られる方ばかりではないと思いますがが、お近くの方は是非、会場で手に取ってください。

 とはいえ、インターネットの便利さも存分に使いたいと考えています。web版は展覧会が終わる頃にアップしますので、会場に行きたくても行けない方はそちらでお読みください。よろしくお願いします。

 僕たち『THE FUTURE TIMES』も、真剣に悩みながらも楽しく、豊かな紙面を、これからも作って行きます。

THE FUTURE TIMES編集長
後藤正文
2017年08月24日

THE FUTURE TIMES 8号の発行に寄せて

 

tft08_hyo1.jpg 震災から5年が経ちました。あっと言う間に過ぎた3年目という節目から、どこへも進めていないような気がして、胸の奥が焦燥感でギリギリと締めつけられます。

 一方で、中央集権的な意味での「東京」は、オリンピックを旗印にグングンと加速して、そのスピード感に目まいがします。「聖火台のないメインスタジアム」や「免震棟のない原子力発電所」。そんな冗談みたいな話題を撒き散らしながら、僕らの社会は一体どこに向かって進んでいるのでしょうか。

 それでも、僕らの手のなかでクシャクシャになった「誠実さ」のようなフィーリングが、誰しもの手のひらにもあることを信じて、僕は仲間たちと『THE FUTURE TIMES』の8号を作りました。



 特集テーマは「5年後の現在地」です。

 まずは、5号でも大反響をいただいた記事の続編として、赤坂憲雄先生と共に宮古から南三陸町まで、三陸沿岸を歩きました。そして防潮堤や嵩上げなど、大規模な土木作業が進む東北地方沿岸の町々を巡りながら、「身の丈」、「小さな成功例」などをキーワードに震災からの復興について語っていただきました。

 また、本誌には何度も協力してくださっているジャーナリストの安田菜津紀さんと佐藤慧さんの取材に同行し、おふたりにはそれぞれ、長くその歩みを記録されている陸前高田にまつわる記事を寄稿いただきました。

 今号では、作家の古川日出男さんと沖縄の南部戦跡と米軍基地、茨城から福島に広がる常磐炭鉱と福島第一原発のある双葉郡を旅して、距離だけでなく時間軸を跨いで、「Not In My Back Yard」問題についても考えました。「自分の裏庭になければいい」様々な施設を、我々はどんなところに委託して生活しているのか。外部と内部を隔てるもの、それを飛び越える力とは何か。震災の前からずっと考えていたことを、古川日出男さんの明晰な言葉とイメージの力を借りて文章化しました。是非とも読んでいただきたい記事です(発売中の「新潮」4月号にも古川さんとの対談が掲載されています)。

_W1A8908.jpg その他、二階堂和美さんと寺尾紗穂さんのインタビューも掲載します。ふたりの温かい視点には学ぶことがたくさんありました。そんな温かみを象徴するかのように、惣田紗希さんが素敵な表紙を描いてくださいました。

『THE FUTURE TIMES』8号は3月28日から配布します。配布先についてはトップページから配布先リストのページに移動できますので、そちらでご確認ください。

 この新聞は無料です。震災の直後に仲間たちと「お金以外に寄付できることはないか」と考えて、制作をはじめました。今でも僕は震災後の無力感を思い出します。本当に、自分にできることは何もないのだと思い知らされるような巨大な出来ごとの真っ只中から、「それでも何かがしたい」という小さな力を持ち寄って、その想いをたよりにこれまで進んできました。どのくらい続ければ、その「何か」に辿りつけるのかはわかりませんが、こうして5年間続けられたことを嬉しく思います。

 どこか窮屈さを増しているような社会のなかで、世の中を照らす灯火のひとつとして、これからも未来に対するポジティブなイメージを発信し続けたいです。

 8号が皆様の手に届くことを願って。

THE FUTURE TIMES 編集長
後藤正文

2016年03月13日

編集長通信 4/1



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宝島AGES vol.2』にインタビュー記事が掲載されました。許可を得て、この「編集長通信」へ転載することにしました。一読いただけましたら嬉しいです。

『THE FUTURE TIMES』に関するインタビューはいろいろなところで受けていますが、まだまだ、どういう経緯で立ち上げたモノなのか上手に説明できている実感がありません。


これまでの「ミュージシャンは政治性を持つべきではない」という言説がまだまだいろいろなところで抑圧的に働いて、とにかく誤解を受けることが多いというのも、正直なところです。

とはいえ、このくらいの社会活動/参加が過剰な政治性だと捉えられてしまう社会は、とても遅れているとも感じます。僕が仲間たちとやっているようなことが、とりわけ特別ではなくなるようになって欲しいし、そうなろうとしていると感じます。いろいろな人たちが、それぞれの場所で様々な活動していますから。市民の社会参加というのは、これからの日本のテーマではないでしょうか。随分とドライに過ごしてきた数十年がありますから。

以下の記事を転載させてくださいました『宝島AGES』の編集部の皆様に感謝します。紙面でも特集されていますので、機会があったら手にとってみてください。



 ーーTHE FUTURE TIMESを創刊した動機を教えてください。

東日本大震災の直後、「何か役に立ちたい」という思いをどうやって形にしたらいいのか、とても迷いました。義援金をいくら送っても、どうにも手応えがなくて途方に暮れました。そういった経験の中で、ふと、寄付できるのはお金だけではないと思ったんですね。例えば、ボランティアの人たちは「行動」や「時間」を社会に寄付している。それならば、僕もお金以外の何かを社会に寄付したいと考えました。

それともうひとつ、デモ行進以外にデモはないんだろうか、という思いも新聞作りのきっかけになっています。様々な問題について声を上げたいけれども、当時はいわゆるデモに対する偏見が今よりも存在していたように思います。そういった状況の中で、どうやって声を上げるのがいいのかを考えていました。ヒントになったのは音楽史です。中世ヨーロッパの吟遊詩人たちは、荘園や国々を渡り歩いて様々な情報を伝達する、新聞のような役割を担っていました。彼らを僕らのようなポピュラー音楽のミュージシャンの先祖と考えることもできます。その役割をそっくり現代に復活させてしまおうと思ったんですね。元来持っていた役割というのは、今の僕らにもどこかしら引き継がれているはずですから、無理なく役割を再現できるのではないかと考えたのです。

そういう流れから、THE FUTURE TIMESの創刊を思いつきました。


ーー数あるメディアの中からフリーペーパーという形態を選んだ理由はありますか?

無料であることには、とても意味があります。現代では、ほとんどのものが貨幣で価値を計られてしまいます。等価交換は僕らの暮らしの利便性を上げてくれましたけれど、どこかで歪さも抱えています。お金を支払った側が、対価としてのサービスを過剰に要求するような風潮も、最近では強く感じます。そういうなかで、無料であること、営利目的でないことは、ひとつのバグのようなかたちで、面白い作用があるのではないかと考えました。

そして、創刊の理念である「行動を寄付する」から考えて、無料であることが相応しいと考えました。


ーーTHE FUTURE TIMESは広告もなければ、お金をとっているわけでもありません。どうやって成り立たせているのでしょうか? また、そのスタイルに至った後藤さんの考えをお聞かせください。

弾き語りイベントなどを行い、レコードやTシャツなど、物販での売上げを取材費や印刷費に回しています。イベントでは購入していただいたグッズになるべくサインをするようにしています。これは参加してくださる方への感謝でもありますし、想いを手渡しするような感覚を大事にしたいからです。売上げは預かったお金だと考えていますから、彼らと直接対面することで、自分の心も引き締まります。

それでも足りない分に関しては…、まあ、なんとかなるものです。


ーー後藤さん自ら福島で取材もされていますが、取材をとおして、報道と現実の違いを感じたことはありますか? 

報道と比較するのはとても難しいですね。マスメディアというのは、とにかく膨大な情報を扱っています。だから、広範囲で網羅的な反面、ニュースが消費されるのも早いように思います。

その点、僕らの取材力には限界がありますから、マスメディアのようなやり方はできないんです。その変わり、同じところに何度も行くとか、そういった継続性によって記事の内容が立体化すると考えています。パッと現場だけ切り取るというよりは時間軸で捉えていくことで、報道とは違った何かを伝えることができたらと思います。

そういう意味では、「福島」とまとめるには、あまりにも福島県は大きいし、あまりにも多くのひとが、それぞれの人生を歩んでいるという当たり前の事実に、目を向けて欲しいと取材を通して思いました。


ーー震災前から原発問題などに関心があったそうですが、THE FUTURE TIMESは、例えば「原発反対」や「脱原発」というメッセージよりも「新しいエネルギーの可能性」「新しい生活のカタチ」をひたすら探るという姿勢を貫いています。その理由は何ですか?

より良い社会を求めるために、反対の意思を表明することはとても大切です。ですが、もう少しスマートな方法を考えたかったのです。何より、自分自身が将来に希望を持てるような情報を掲載したかったんです。そうすると、やはり「こんな面白いアイデアがあるんだよ」という記事作りのほうが、単純にワクワクするんですね。ある種の深刻さを演出するよりも、こんなにも可能性があるんだ!と感じながら、暮らしていきたい。ただそれだけです。


ーー「これからの農業」や「これからの暮らし方」など具体的な未来像も提案されるようになってきました。そこに至った理由はありますか?

単純に、日本中でユニークなことを始めている人たちがたくさんいるんですね。そういう人たちがそこら中でガシガシと暮らし方を開拓している。そういった動きに感化されているのだと思います。そういう人たちのユニークさを横流ししていけば受け取った人たちも開拓を始める。そうやって社会は豊かになっていくのではないだろうかと考えています。

あとはもう、当たり前のことですが、僕らの生活が変わらなければ、社会は変わらないですから。個人の集積が社会である以上、それは自明です。例えば、地産地消がブームになれば、消費者が望めば、第一次産業も流通産業も変化します。だから「暮らし」は大きなテーマだと考えています。


ーー具体的な未来像の提案と同時に、共通したテーマを設けるのではなく、毎回、違うアプローチから未来についての話や考え方を、いろんな人に聞きに行って、対談記事として掲載していますが、今まで登場された方の話でとくに印象に残っている対談はありますか? 対談は毎回、刺激になっていますか?

対談はとても大きな刺激になっています。すべての対談が印象深いですね。発見の連続です。


ーー途方もなく思えるテーマを身近なところに引き寄せよるのは大変な作業だと思いますが、何をどう扱うかというのはどのような過程で決めているのですか? 侃々諤々の編集会議があるのでしょうか? それとも後藤さんの頭のなかで出来上がっていくのでしょうか? そのプロセスを教えてください。

編集を手伝ってくれている仲間たちと会議を重ねて、毎号の内容を決めています。僕が最初に提示する興味が方向性を決めますけれども、その枝葉の部分について、仲間たちの助言は大きな助けになっています。そして仲間たちの興味も、紙面にはとても大きく影響しています。


ーーTHE FUTURE TIMESをつくっていくなかで、一番苦労することは何でしょうか? 持続する意思の力なのでしょうか? 経済的なことでしょうか? 時間的なことでしょうか?

それぞれにTHE FUTURE TIMES以外の仕事を抱えていることです。本業の合間を縫って取り組んでいることですから、やはり時間的な制約をクリアすることが、もっとも苦労している部分だと思います。


ーー世の中は少しずつでも変わっているという手応えはありますか?

僕が新聞を出す前と、出した後では、THE FUTURE TIMESが存在するという点で明らかな違いがあります。大きな手応えはありませんが、そういった事実は案外強く背中を押してくれます。手にしてくれた人たちがいるということが、ささやかな変化の証だと思っています。

実際、僕の音楽を知らないお爺さんから、感想をいただいたことがあります。そういったある種の越境が起きていることには喜びを感じています。


ーー今後、どのようなことを記事にしていきたいですか? 次号でやりたいことはありますか?

被災地の状況については、継続的に追いかけていきたいと思っています。


ーーミュージシャンとしての活動(曲作り、レコーディング、ライブ、ソロ活動)とTHE FUTURE TIMES編集長としてのバランスはどうとっているのでしょう? つねに同時にあり、アウトプットが違うという感じなのでしょうか?

それぞれにアウトプットのチャンネルが違うようにも感じますが、その源泉は僕なわけですから、特にバランスを取ろうと意識してはいません。僕の内面から湧き出している意欲が原動力となって取り組んでいるうちは、そのどれもが分離せずに、僕の体の中でちゃんと繋がっていますから。無理に分けなくてもいいんです。

質問者:森内淳 高田秀之(『宝島AGES』)


2015年04月02日

THE FUTURE TIMES 7号の発行に寄せて


TFTvol7_hyo1_s.jpg 『THE FUTURE TIMES』 7号が完成しました。特集記事は「暮らし方で社会を変える」です。

 2011年。東日本大震災の直後、僕は普段使っている駅の暗さに驚きました。計画停電で列車の運行本数が制限されるなか、駅の照明も間引かれ、電灯がないとここまで暗くなってしまうのかと率直に感じたのです。また、たとえばエスカレーターの手すりに沿って隙間なく設置された蛍光灯などに違和感を覚えました。僕たちは、必要以上の電気を使うための建物を建て続けてきたのだとも思いました。

 そこで興味が湧いたのが建築物や街でした。そもそも建物が、僕たちをエネルギー漬けにしているのではないか、そんな問いが立ち上がりました。そして、いつかそういった問題について、建築家たちにインタビューしてみたい。そんなアイデアをずっと温めていました。

 ただ、それをそのまま記事としてまとめるには、テーマが大き過ぎるとも思いました。「では、すべての建物を建てかえます」というようにはいかない。一つひとつの建物が集合した街となると、その成り立ちはとても複雑ですから、「社会は変わるのか
」という問いは、宛てどころのない手紙みたいなものになってしまうだろうと思いました。あるいは的のが大きいけれど、どこを撃っても点数の低い射的ゲームのようだとも。

 それでも相変わらず、建物は僕たちの生活をコントロールしています。もちろん僕たちは壁を突き抜けることはできませんから、身体の動きは制限されるわけです。建物や街は構造的に強い。そういうことに抗うにはどうしたらいいのかをずっと考えていました。そして、強固な何かに立ち向かうのではなくて、僕たちの「身体の使い方=暮らし方」を変えてゆくのがいいのではないか、そんなように問いは反転して行きました。

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 前置きが長くなりましたが、今回の「暮らし方で社会を変える」は、そんな特集記事です。街を変えるのではなくて、僕たちが変わること。制度の変革ありきではなくて、僕たちがどう変えたいと思っているのかということ。街や建物や制度の問題を取り上げるのではなく、僕ら自身の有り様についてを問い直す特集です。

 建築家の藤村龍至さんには埼玉県鶴ケ島市とさいたま市のプロジェクトを通して、公共建築や行政への市民参加の可能性についてうかがいました。建築と民主主義。一見関係のないものが見事に繋がります。

 岩手県の紫波町では、行政と民間の力で、補助金に頼らない新しい町づくりが進んでいます。地元・紫波町の木材を使ったエコハウスと地域熱共有について、同じく建築家の竹内昌義さんに解説いただきました。

 札幌では「暮らしかた冒険家」を標榜するご夫妻を取材。僕らがどうやって暮らし方を変えて行けばいいのか、実践へのヒントがたくさんありました。

 いとうせいこうさんの「あっちこっちと未来」は今回で三回目。7号では『トビムシ』の竹本さんと共に、日本の森林の豊かさと明るい未来について語っていただきました。また、エネルギー自給率100%を目指す岐阜県高山市の國島市長にもお話をうかがいました。

 そして、今号から憲法の特集もスタートします。初回は「憲法と民主主義」と題して、憲法学者の木村草太さんに、憲法とは何かという基礎的なことや、従来の護憲/改憲論とは違った角度から、僕たちに求められる “市民としての成熟” について語っていただきました。

『THE FUTURE TIMES』7号は12月2日から配布されます。配布先については、トップページからのリンクに配布先の一覧がありますので、そちらを参照ください。

 この新聞は無料です。有志たちが集まって、時間や労力を投げ出すようにして制作しています。僕たちはこの新聞作りを、社会への寄付だと考えているんですね。お金だけではなくて、行動だって寄付できるんだということを実践しているつもりです。

 自費での制作ですから、ボタンひとつでお届けすることはできません。どうか街に出て、手にしてみて下さい。僕らにとっては、読んで下さる皆さんが、この新聞を探して街に出ることが、すでに、ほんの少しの変化なんだと考えています。

「暮らし方で社会を変える」手に取って読んでいただけたら嬉しいです。よろしくお願いします。 Web版も随時アップしていく予定です。

2014年11月09日

THE FUTURE TIMES 6号の発行に寄せて


img0006.jpg 震災から3年が経ちました。

 あっと言う間の3年だったようにも思えますが、一方で、長い長いトンネルに入ったかのように、ずっと風景の変わらない車窓を眺めているような気分にもなります。そして、それでも強かに、いわゆる「東京」的なものがずんずんと進んでいて(その象徴はオリンピックなのかもしれません)、それを「復興」とは思えずに置いていかれてしまうような感覚もあります。

 思い起こせば、震災後間もない時期に放送した『THE FUTURE TIMES RADIO』。放送は六本木ヒルズにあるJ-WAVEのスタジオから行いました。番組のオープニングでは六本木の交差点に出て、人気がなく薄暗い繁華街の様子をレポートしたように記憶しています。



 あれから3年。六本木の街は何ごともなかったかのように、煌々と輝いています。ネオンもイルミネーションも元通り。まるで計画停電のことも忘れてしまったかのように。

「復興」とは一体どういうことなんでしょうか。

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 THE FUTURE TIMES 6号の特集は「三年後の現在地」です。

 岩手県陸前高田市からは海に戻ることを選んだ漁師たちの覚悟と再生を、福島第一原発から3kmの双葉郡大熊町で行方不明の娘を捜索し続ける父親と仲間たちのレポートを、双葉郡富岡町では重苦しい現状とささやかな兆しについてのルポルタージュを、宮城県南三陸町ではある学習施設と子供たちの未来についてを、それぞれ記事にまとめました。震災や復興のすべてをフォローアップしたものではありませんが、それぞれに広がる風景から、想像の射程を拡げてもらえたらと願います。

 そして、岩手県の大船渡では『ライブハウス大作戦』を取材しました。震災直後は不謹慎だとされた音楽にまつわるあれこれ。僕も含めて、ミュージシャンたちは思うところがたくさんあったと思います。音楽にできることは何なのか。その答えではないかもしれませんが、いろいろなヒントがこの活動には詰まっています。ジャンルや文化を越えて、『ライブハウス大作戦』がひとつの交流と出会いの「場」になっているのです。そんなことについての対談記事です。もちろん、継続することの重要性についても語られています。

 そして恒例のインタビューでは、画家・彫刻家の奈良美智さん、ミュージシャンの畠山美由紀さん、詩人の和合亮一さん、ロックバンド THE BACK HORNの松田晋二さんという東北出身の4名に未来についてそれぞれ語っていただきました。

 前を向いて進んでいくことももちろん大切です。けれども、そのスピードについて僕は問いたい。誰かを、何かを、置いてけぼりにしてしまうような速度で僕たちは進んでいるのではないか。

 一度立ち止まって、これまでの3年のことを振り返りながら、これからについてもう一度考えるような、そんな紙面になりました。手に取っていただけたら嬉しいです。

 Web版も紙面とは違うバージョンの記事を随時アップしていきますので、よろしくお願いします。
 

2014年04月14日

THE FUTURE TIMES 5号の発行に寄せて


 THE FUTURE TIMES 第5号が完成しました。

tft5_hyo1.jpg 今号の特集は「震災を語り継ぐ」です。7月31日から配布がスタートします。

 例えば、「これより下に家を建てるな」という石碑は年月によって朽ち果てて、町や村の風景の中に埋もれてしまう。また、多くの民俗史や郷土史の書籍に震災の記憶が書き綴られるけれど、誰にも読まれなくなって風化してしまう。そういう歴史の繰り返しの中に私たちは生きています。

 一方で、「津波が来たら高台にそれぞれ、てんでんばらばらに逃げろ」という防災教育が多くの小中学生の命を救ったという例もあります。この『津波てんでんこ』という教えは、教訓を残すということの大切さと共に、伝えていくこと、共有していくことの重要性を私たちに伝えているのです。

 そして幸いにも、様々な防災に関する情報を、住んでいる地域を越えて共有することが可能な時代になりました。これは本当に、とても大きな希望だと思います。

 そういう視点から、紙面では災害を記憶するための方法について考えます。そして、この震災だけでなく、千年前の東北から現在まで、復興と未来、福島から始まった新しい取り組みについて、『東北学』の赤坂憲雄教授に語っていただきました。一万字を越えるロングインタビューです。

 毎号掲載している「Connecting the dots 〜福島からの言葉〜」という記事では、その赤坂教授のインタビューでも触れられている、福島の会津からはじまった『会津自然エネルギー機構』の立ち上がりについて紹介します。


 そして今号には、創刊以来構想を練っていた「贈与」についての記事を掲載します。何度も書いてきましたが、私にとって新聞を作ることは「行動を社会に寄付」することです。震災直後、募金の宛てどころのなさと手応えのなさにショックを受けた私は、「行動」もお金と同じように寄付できるのではないかと考えました。思えば、被災地で活動しているボランティアの皆さんは、まさに「行動」を寄付したことになりますよね。

 そういう考え方について、内田樹さんと釈徹宗さんに、それぞれ「贈与」と「お布施」という視点から明快に語っていただきました。記事のタイトルは『贈与とお布施とグローバル経済』です。そう、この経済一辺倒の流れに対するカウンターとして、様々なヒントが「贈与」と「お布施」にはあります。是非、皆さんに読んでいただきたい記事になりました。

 その他、原子力発電と遺伝子組み換え作物の以外な共通点を記録した映画『世界が食べられなくなる日』のジャン=ポール・ジョー監督、スピッツの草野マサムネさん、ACIDMANの大木伸夫さんのインタビューも掲載します。


 今号は、今回の参議院選挙の結果だけに捕われず、もっと長いスパンで物ごとを考え、私たちの子供や孫の世代に向けて何を語っていくのか、残していくのか、そいう普遍性のある記事を作ることができたと思っています。

 歴史の教科書は時の権力が作ります。それは往々にして目が粗く、我々が簡単に改編できるものではありません。それでも、私たちには言葉があり、ペンがあり、それを残すコミュニティがあります。これは民俗史であり、郷土史でもあります。何も権力の側に立たなくても、そうやって繋いでいくこと、残していくことができます。その言葉に未来の世代が自由にアクセスできるとしたらどうでしょうか。30年、50年先のことを考えて下さい。

「震災を語り継ぐ」という特集には、そういった大きなテーマを込めたつもりです。皆さんに届いてくれたら嬉しいです。紙面から、実社会に、画面の外に、取り出してくれたら本望です。

 Web版も随時更新していきますので、よろしくお願いします。

2013年07月24日

THE FUTURE TIMES 増刊号の発行について


 THE FUTURE TIMESの増刊号の発行が決定しました。

tft_rec.jpg 今回の特集はレコードストアデイというイベントに合わせて、丸ごと一冊「音楽と未来」です。

 東日本大震災からの復興やエネルギーの問題などを通して、「未来について考えよう」というテーマで発行してきた新聞ですから、このように音楽だけの特集をすることは、本来の新聞のテーマから少し離れたように感じるかもしれません。ですが、僕は音楽の現場で起きていることも、現代の空気を映す鏡のひとつだと考えています。

 今回の特集号では、音楽の作られ方や聴かれ方、音楽の現在と未来について佐野元春さんに語っていただきました。音楽の現状、特にポップミュージックについて話をする場合、どうしても「CDが売れなくなった」というようなネガティブな話題になるように感じます。でも、そういった音楽ソフトの売上げ枚数や額面、つまり産業側からの視点だけで音楽全体が衰退しているように語られることには違和感を覚えます。そのあたりの感覚と音楽の未来について、佐野さんは明確に、ポジティブな言葉を発して下さいました。インタビューのタイトルは「僕らの音楽は鳴り止まない」です。詳しくは紙面をご覧下さい。

 それから、今回の特集では、8名のDJ/ミュージシャンにアナログレコードへの愛着とその魅力について、合わせて「音楽とメディア」について語っていただきました。レコードだけではなく、CDやMP3などのデータ配信についても話していただいています。ワンクリックで楽曲のファイルが手に入る便利な時代に、どうして身体性のある「容れ物」にこだわるのか、あるいはこだわらないのか、とても面白いインタビューになりました。

 以前に行った中沢新一さんとの対談でもありましたが、音楽というのはもともと価格のつけようがないものだったと思います。才能に対して、尊敬や畏怖といった念からはじまって、そこに対価がいろいろなかたちで支払われるという流れだったはずです。けれども、現代では基本的に対価は前払いですよね。何よりもまず、お金のやりとりが先に来ます。もちろん、それを悪だとは言いませんが、何か少しずつ、作る側も受け取る側も、音楽のやり取りに双方向から宿されていた尊敬とか愛情とかいうフィーリングを忘れつつあるのではないかと感じます。

 それはなにも音楽だけではなくて、大量に何かを買って、使い、捨てていく時代のあちらこちらで起きていることなんだと思います。極端な喩えですが、僕たちは豚を食べるときに豚の屠殺現場のことを考えなくてもいいような便利な世の中を生きています。

 もちろん、「今まではずっと夢物語のようなクリーンでピュアな世界だったんだ!」などとアナログレコードの時代を誉め立てるつもりもありません。ただ、こうしていわゆる「不便」なアナログレコードが見直されていること、世界中でCDショップがなくなりつつあること、データ配信がどうやら主流になっていくこと、そういう移り変わりの中で見えてくることが沢山あります。

 THE FUTURE TIMESの増刊号は、繰り返しますが、丸ごと一冊「音楽」の特集です。ですが、これは喩え話です。一号丸々、僕らの日々の中にある何かを映しています。「それってなんのことだろう?」そういう号になってくれたら嬉しいです。

 ちなみに、5号はこれから取材が始まります。夏前にはお届けする予定ですので、しばらくは「音楽」の特集をどうぞ。


<RECORD STORE DAYとは>
RECORD STORE DAYは海外や国内のレコードショップとアーティストが一体となって、近所のレコードショップに行き、CDやアナログレコードを手にする面白さや音楽の楽しさを共有する、年に一度の祭典です。限定盤のアナログレコードやCD、グッズなどがリリースされ、多くのアーティストが各国でライブを行ったりファンと交流する日です。
2013年03月27日

THE FUTURE TIMES 4号の配布がスタートしました!!


tft4.JPG THE FUTURE TIMES 4号の配布がスタートしました。配布先については、こちらのリストを確認して下さい。無料です。

 この新聞がどうして紙なのか、ということを色々な場所で訊かれます。もちろん、web版だけではないことには意味があります。

 例えば、TwitterでもFacebookでも、その他のSNSでも、同じような考えや興味を持つ人たちが交流しやすいという反面、それがタコ壷化、つまり似たような人ばかりが集まってしまうということが起こります。だから、例えばいろいろな問題が話題になっているようにSNSのタイムライン上で見えても、別のコミュニティでは知っている人が少ないなんてことが起こります。

 紙に刷ることの強さは、全く関係のないところで新しい出会いや交流を獲得できる可能性がwebとは別のかたちであるというところです。例えば、時事ネタを拾おうと思って買った雑誌には、自分にとってどうでもいい情報もたくさん載っています。そんな情報の中から、人生を変えるような映画に出会うかもしれない、というのが雑誌の魅力でもあります。でも、このような出会いは、ネット上で全く起こらないとは言い切れないですよね。

 ではもう一歩、紙の魅力とは何か。

 それは、例えば、このTHE FUTURE TIMESを誰かがどこかの喫茶店に忘れることから起こります。或いは、忘れる場所が会社の食堂でも構いません。実家の食卓の上でもいいのです。そうすると、THE FUTURE TIMESをもらってきた本人以外の誰かが読むかもしれない、というチャンスが発生します。これは紙ならではの出会いです。置き忘れることができる肉体があるからこそ得られる機会です。また、上書きされたり、流れてしまったりしませんから、その紙の上でゆっくりと情報が発熱します。急激な盛り上がりを作ることは難しいかもしれませんが、ゆっくりと、確かな温度が持続します。誰かが紙面を開く度に、その熱は立ち現れます。

 実際に僕は、とある町の年配の林業家の方に話しかけられて、THE FUTURE TIMESの住田町の記事を読んでペレットストーブについて視察に行くのだという話を伺ったことがあります。こういう交流/対流は紙ならではのものだと、感動したことを覚えています。

 情報に身体が、肉体があるということの意味、紙に書き付けられていることの強さ、それについては常々考えています。これは音楽とCDやレコード、ネット配信について考えることに似ていますから、ミュージシャンとして、とても勉強になります。

 僕の尊敬する思想家・作家の佐々木中さんはこのような単文を以前にツイートしていたそうです(ある編集者の方からお教えいただきました)。感銘を受けた言葉ですので、ここに引用します。

「史実。紙の本は戦争に強い。塹壕のなかでも列車来ぬ待ち時間でも配給待つ長蛇の列にあっても電源なしに読める。夜でも蝋燭一本で。両大戦中再読に耐え検閲官が理解できぬ高踏な良書は売れている。どんな大空襲でも完全消失した本は無い」

 とても心強い言葉です。

 大分、話が逸れました。

 皆様、THE FUTURE TIMES、是非手に取って下さい。僕らが足で集めた情報です。町に、その足で取りに出掛けて下さい。そして、いろいろな場所に置き忘れて下さい。この狭いコミュニティから、もっと大きな場所に解き放ってあげて下さい。パブリックスペースに展示して、皆で回し読みして下さい。そうやって、予期せぬ出会いがたくさんあったら、本当に嬉しいです。

 想いや気持ち、感情を肉体化させること。可視化させること。それはやっぱり、ちゃんと伝わります。別に紙じゃなくたって、想いや気持ち、感情や情報が肉体化されているものが身近にあります。それは人間です(だから、デモは意味があると僕は考えます)。

 この新聞がどうして一切の広告を取らずに無料なのかは、また今度話します。

 ではでは、THE FUTURE TIMES 4号。よろしくお願いします。


 
2012年12月12日

THE FUTURE TIMES 第4号について


 THE FUTURE TIMES 第4号が完成しました。

TFT04_hyo1.jpg 表紙は『NARUTO -ナルト- 』の岸本斉史さんが描いて下さいました。縁側から覗いた家族の、団らんのひととき。何気ないひとコマですが、とても温かい感触に溢れています。

 インタビュー記事には、最新作『希望の国』が話題の園子温監督、作家の乙武洋匡さん、女優の松田美由紀さん、コミュニティデザイナーの山崎亮さんが登場。それぞれの想い描く “未来” について語っていただきました。

 エネルギーの記事では、いとうせいこうさんと山口県熊毛郡上関町祝島を訪ねました。島の対岸に予定された上関原子力発電所と、その建設に反対するデモ。デモはなんと30年も続いています。豊かな島の自然と人々の暮らしを見学しながら、デモの話だけではなくて、様々な話題について、せいこうさんと対話しました。対談の全文は後日、web版としてもアップします。

 また、第4号の紙面にはアナログフィッシュの楽曲『抱きしめて』のフリーダウンロードコードを添付しました。今を生きる僕たちに必要なフィーリングを有した素晴らしい楽曲ですので、是非ダウンロードして聴いてみて下さい。


 そして、今号の特集記事は『それぞれのふるさと』と題して、福島第一原子力発電所にほど近い福島県の地域を訪ねました。震災直後から現在も南相馬市で捜索活動を続ける消防団『福興浜団』のフォトジャーナリスト・渋谷敦志によるドキュメント、誘致の声によって完成した子供たちのための室内公園『ふくしまインドアパーク 南相馬』、川内村村長・遠藤雄幸さんの『帰村宣言』にかける想い、20km圏内の富岡町を故郷に持つミュージシャン・渡辺俊美さんのインタビュー、この4本の記事を掲載します。

 僕たちは、原発事故以降、様々な分断の中を生きています。例えば、放射能のリスクに対して、避難する人、しない人。行為にだけ注目すれば結果はふたつしかありませんが、人の数だけ、それぞれの選択があり、それぞれの “理由” があります。それでも巷には、マルバツクイズのようにふたつに分けて、お互いに厳しい言葉を投げ合うような風潮があります。

 こういった分断には、想像力を持って抗わなければなりません。身体性を全く伴わない空想のことを “想像力” と呼ぶことはできないと思います。人の声に耳を傾けること。それぞれの立場や理由を知ろうとすること。そして思いやること。思い合うこと。それが本当の意味での “想像力” ではないでしょうか。

 分かりやすい旗印となる言葉のもとに、人々をひとつのイメージのもとにまとめて語るのには無理があります。一方的に行われるイメージの単純化は、それは人間それぞれの顔を奪うような行為です。相手がのっぺらぼうであれば、その無機質さや匿名性に向かってどんな乱暴な言葉でも吐き出せてしまいます(もっとも、それを乱暴だとすら思っていないことがほとんどですが)。そして、その言葉は更なる軋轢と分断を生み出します。

 震災から1年と9ヶ月。

 僕らが本当に考えなければいけないこととは何か。この分断の元凶とはなんだったのか。紙面にはそれを直接書きつけてはいません。ですが、それを考えるきっかけとして、THE FUTURE TIMESが存在してくれたら嬉しいです。

 第4号が皆様に届く、そのときを願っています。

 WEB版も随時更新していきますので、よろしくお願いします。
2012年12月03日