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台湾「太陽花学運」レポート

黒いTシャツを着た人たち

3月30日。午前10時。

カメラの手入れや身の回りの準備をし、不安定ながらも辛うじて繋がる宿のWi-Fiを使って昨日の出来ごとをTwitterにアップする。そして、日本で買っておいたネームプレートに手書きで自分の名前と国、メールアドレスを書き込んで外出。何かあった時の為に首から下げておくことにしたのだ。

外は快晴で気持ちが良かった。ゆっくりご飯を食べる時間がなかったので、お茶と水、サンドイッチを買って食べながら歩いた。休日を楽しむ人たちで街は賑やかだった。デカいカメラがぶつからないよう人混みを掻き分け、立法院近くに来ると、大勢の黒いTシャツを着た人たちが目に映る。その群衆の中に入り、昨日「議場の中へ入ってみなよ」と僕に言ってくれた男の子二人組に会いに行った。でも、そこに彼らはいなかった。僕は引き返してデモの流れのなかに入った。

僧がいる。子供連れが居る。新聞を配るおばさん。メッセージボードを掲げる学生たち。お祭り気分のカップルがはしゃいだりしている。大通りに出ると歩きやすくなり、みんな同じ方向へ向かっているので僕も一緒に歩いた。

デモは13時から立法院前からスタートすると思っていたのだけれど、なんだか違う様子で、僕は疑問を感じながら前へと進んだ(そもそも僕はデモというものに参加したことがなく、デモというものをニュース等でしか見たことがなかった)。歩いているうちに人の壁が見えてきた。先に見えるのは景福門(台北城の東門)だが、更に近づいて少し高い所から見ると、何という数の人たちだろう。足場を組んで設置されたスクリーンにはステージの様子が映し出され、演説の声も聞こえてくる。しかし、肝心のステージが見当たらなかった。

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巨大なステージが現れた

これは一体どういう状況なのか。人の壁に沿って、徐々に移動してみると……、大きなステージが目に入った。まるでフジロックのグリーンステージのように感じた(実際にはそんなに大きくはないけれど)。こういうことだったのか。辺り一面は人に覆いつくされ、メディア関係のカメラがたくさんいた。再び、昨日の学生たちの忠告が頭をよぎった。もっと早くから行動を開始し、ステージ下に行っておくべきだったのだ。一瞬諦めかけたが、目を凝らし辺りを眺め導線を探した。群衆はみんなほぼ座っており、簡単に遠くまで見ることができた。

雨も降っていないのにみんな傘を差していた。日傘だった。なんとかステージ近くへと進みながらも、シャッターを切った。顔を隠す人がいる。素性がバレるとマズい人たちも中にはいるのだろう。顔が隠れるほどのサングラスやマスクをしている人たちもいた。でも、そういった危険を冒してでも唱えたい気持ちがあるということだ。それだけの価値ある行動なのだろう。

デモにはとても多くの人々が参加しているのに、周りを見ても喧嘩や暴動が起こらないし、周りにゴミが全く落ちていなかった。食べ物や飲み物も無償で配られ、ヒマワリが皆に手渡されていた。

ステージ右には黒地に白文字で、「和平守護臺灣(台湾に平和を)」、左には「譴責國家暴力(国家暴力への非難)」の垂れ幕。横にはそれぞれ大きなスクリーンが掛けられ、ステージの様子が映し出されていた。ステージの後ろには、白地に黒で「捍衛民主(我々の民主主義を守る)」「退回服貿(サービス貿易協定の撤回)」の文字。台湾島も描かれていて、その下には「never give up」。スピーカーはラインアレイで何段も吊り下げられている。スクリーンはLEDだし、ライティングもしっかりセッティングしてある。僕は感心してしまった。こういうところで判断して申し訳ないと思いながらも、とても感心してしまった。

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