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台湾「太陽花学運」レポート

意志を表明する若者たちの美しさ

今日はひとまず引き上げようと、呉(ウー)さんの所へ向かった。呉(ウー)さんは他のリーダー的な学生も交えて明日のデモの説明をしてくれた。書面を見せてくれたが台湾語で全く分からなかったけれど、僕が持っている地図を指しながら、現在地、デモの場所など、詳しく教えてくれた。そして、「明日は本当に沢山の人たちで溢れるから気をつけて」と、僕を見送ってくれた。

数歩進んだ瞬間、議場がざわついた。林飛帆(リン・フェイファン)、陳為廷(ツェン・ウェイティン)代表の登場だった。床に座っていた学生たちも全員代表と共に並ぶ。それだけでも50〜100人くらいは居るだろうか。持ってきたMacを開き、原稿を読みながらの演説が始まった。鋭い目つきだった。僕は疲れて早く宿に帰ろうと思っていたけれど、目が覚めた。

無数のシャッター音。カメラ・クルーの集中する目線。2階の方を見ると劉祖澔(リュウ・ズゥハオ)が俯瞰で写真を撮ろうと精一杯に体を乗り出している。僕はそんな劉祖澔(リュウ・ズゥハオ)を撮った。そして、様々な角度からこの瞬間を撮った。

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最後にみんなで掛け声をあげ、演説は終わった。代表の周りにメディアが集まる。僕は遠巻きから、それを撮影した。僕も本当に疲れていたんだろう、冷静になった今では、なんであそこに分け入って彼に話しかけ間近で撮らなかったのか、後悔している。

待合室のような部屋では数人、吊り下げられたTVで議場の中の様子を眺めていた。2階へ続く階段には数人の学生がおしゃべりに興じている。PCに向かう学生の1人と目が合って、ちょっと話す。世界中で明日のデモ開始の13時(台湾時間)に合わせて集会が行われることを教えてくれた。日本では東京、京都、福岡の3ヶ所で行われるという。「じゃあね」と別れて出入口に向かった。バリケードには、さっきまで見かけていた学生がいる。警察隊は廊下から外を見張っていた。

建物の出入口で僕を案内してくれた学生に「ありがとう」と伝えた。ちょっと離れたところから写真を撮ると、彼らはポーズを決めてくれた。そして、ここでも明日のデモの説明をしてくれた。「人の波に紛れてどうしようもなくなるから、総統府の側のステージに居たほうがいい」とのことだった。携帯の翻訳機能を使って説明してくれようとしたが、表示された日本語はめちゃくちゃだ。間近で彼らを撮らせてもらった。

遠くから撮っていたときは少し怖かったけれど、よく見るとやはり、みんな若くてあどけない。そして、そんな彼らをこのように憤らせる“オトナ”たち。国は変わっても“オトナ”たちのやることは変わらないなと思った。違いはこの若い世代たちの勢いや、胸に秘める郷土への誇りだろう。それを汚されたと感じる者たちの憤りは計り知れない。彼らは台湾を愛しているのだ。

現在の台湾は、彼らの親や祖先によって脈々と受け継がれ積み上げられた台湾の歴史を台無しにされるかもしれない重要な局面なのだ。同じ台湾に住んでいるはずなのに、なぜこんなにも“オトナ”たちは彼らと思考がかけ離れるのだろう。そこは今の日本と重なって見える。

いや、それを良しとする者がいることも間違いではないのだ。このようなデモには参加せず、穏便に、“オトナ”たちが考える流れに流されていたほうが楽なのだろう。それでも、ここで重要なのは、意思の表明だと思う。納得がいかないのであれば戦う。そんな彼らの姿が美しかった。

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初日の取材が終了

立法院の敷地から出ると雨は止んでいた。僕は中へと促してくれた彼らを探す。いた。ふたりとも座り込んで携帯をいじっていた。パシャパシャとその様子を撮っていると僕に気づいてくれた。彼らと笑顔で抱き合った。まるで生き別れになった戦友と再会したような、そんな感じだった。「今夜はここに泊まるの?」と敷かれたダンボールを彼らは指差す。明日の撮影の準備とかもあるから一旦宿に帰ることを告げると、寂しげな顔をされた。みんな疲れていると極端に心細くなるものだ。しかし、外国人の僕でさえ仲間と見てくれているのが嬉しかった。

郭育圻(グオ・イチィ)にしっかりと充電したバッテリーを届けるためにも、僕は宿に帰らねばならなかった。レンズも取り敢えずのものでちゃんと揃えて来ていない。

宿までは歩いて30分位。台湾ではタクシー料金が安いし、利用すればよかったのだけれど、いまいち場所を説明する自信が無かったので歩いた。雨上がりの街は気持ちがいい。ところどころWi-Fiスポットに遭遇するので、日本にいる友だちに連絡を取りながら宿に戻った。

宿に荷物を置いて、足ツボマッサージを探した。すぐ近くにマッサージ店があった。1時間800元。疲れていた僕は、いつの間にか寝入ってしまった。