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映画『世界が食べられなくなる日』 | ジャン=ポール・ジョー監督 インタビュー

ほとんどの日本人が知らない事態が進行中だ。

後藤「僕は前作の『セヴァンの地球のなおし方』も劇場で鑑賞しましたが、今の説明から、放射能の問題と遺伝子組み換えの問題がどうして並列に並べたかがよく分かりました。監督は環境問題からこの映画のテーマに入っていきましたよね」

JPJ「その通りです」

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後藤「その一方で、環境問題から少し離れますが、僕の興味は日本が参加しようとしている『TPP(環太平洋戦略的経済連携協定、環太平洋パートナーシップ協定)』という貿易の取り決めにあります。アメリカの穀物メジャーとも結び付きの強い、日本の経団連が進めようとしている動きです。現在は日本の農家たち、それから一部の善良な食品メーカーが『自分たちの製品に遺伝子組み換え作物を使っていない』という表記を自主的にしているのですが、それができなくなる可能性がある。投資家の利益を損なうということで、訴訟の対象になるからですね。そうした問題を僕はとても危惧しています」

JPJ「なるほど、日本でも世界と同じ問題が起きていることが分かりました」

後藤「もうひとつ心配があって、日本のほとんどの農家では、作物の『種』を自分たちで採っていないのですが、お米に関してだけは例外で、自分たちで種を採っています」

JPJ「今のところは、ですよ。それも」

後藤「ええ。だから、ここがどんどん浸食されてゆくのではという恐れがあります。こうした問題をほとんどの日本人は知りません。アメリカの穀物メジャーによって全世界で引き起こされている問題も、同じように知らないのです」

大企業が生物を搾取し、私有化できる世界。

後藤「僕は以前に『チョコレートの真実』(キャロル・オフ著、北村陽子訳)という本を読みました。コートジボワールにIMF(国際通貨基金)が介入して、カカオをもっと作れと言ったんですよね。その結果、コートジボワールの多くの人たちは自分たちが食べる食糧の生産をやめて、お金になるカカオを作るようになりました。そのカカオから得たお金で、せっせとアメリカの穀物を買っている。僕は監督の映画を見て、この本と同じ問題を訴えていると思いました。監督自身から、もう少し背景を伺っていいですか?」

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JPJ「今回の映画には、冒頭で “我々は戦争の中にいる。これは“第三次世界大戦"だ。これほどの犠牲者を出した戦争は、これまでになかった" というナレーションが入ります。1960年代、アメリカにキッシンジャー(※1)という国務長官がいたのをご存知ですか。彼は『世界を制覇しようと思ったら、食物を制覇すればいい』と友人の大富豪、ロックフェラーに言ったらしいのです。このときアメリカがした決断の結果を我々は今、生きているわけです」

後藤「なるほど」

JPJ「これは生物の搾取、生物の私有化でした。農家の人たちは1万2,000年も前から、自分たちが収穫した穀物の一番いい種子を、次の作物のために植え付けることができました。しかし、遺伝子を組み換えた種子に対する特許を、モンサントを中心とした企業が持ってしまった。さまざまな方法で侵入するGM種子は、当初は食糧問題を解決するという触れ込みで拡散しました」

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鶴澤清志郎

ジャン=ポール・ジョー

Jean-Paul Jaud。監督・プロデューサー。フランス生まれ。1979年より監督として多くのテレビ番組を制作。スポーツ番組の制作と中継を担当し、スポーツ映像に革命をもたらすほか、移りゆく四季の中で織り成される人々の暮らしを追ったドキュメンタリーを制作。2008年、生きるための必須行為“食”を取り巻く事象を振り返り、映画『未来の食卓』を製作。2011年、前作に続く映画『セヴァンの地球のなおし方』を発表。続く『世界が食べられなくなる日』は、渋谷アップリンク他、全国順次上映中。

(※1)キッシンジャー国務長官

ヘンリー・アルフレッド・キッシンジャー。第56代 アメリカ合衆国国務長官(任期:1973年9月22日~1977年1月20日)。ドイツ出身でアメリカのニクソン政権およびフォード政権期の国家安全保障問題担当大統領補佐官、国務長官。国際政治学者。