HOME < 影山桐子(わくわくと未来)

影山桐子

周りが笑顔になることが、なによりも幸せだから

後藤「自分自身には金銭が入らない。つまりは、寄付とか贈与っていう“行為”として大会を主催・運営してるわけじゃないですか。とても素晴らしいと思うんですが、その原動力はどういうところにあるんですか?」

影山「やっぱりね、自分がしたことで周りのひとが笑顔になって喜んでくれることが、自分がなにかをしてもらうよりも嬉しいんです。私自身、主宰している駅伝部で大会に出るんですが、その度に“駅伝新聞”を作っているんです。参加するみんなが仲良くなるツールを作りたいなと思って。内容は参加する人たちの紹介、今日の見どころ、二次会のお店の様子、今後の大会スケジュールなどで。そんなのを、誰にやれと言われたわけでもないのに作っているんですけど……すっごく大変なんです(笑)。でも、作った新聞を配って、みんながそれを話題に仲良くなって、楽しそうに話したりしているのを見ると、ホントに幸せを感じちゃうんですよね」

後藤「影山さん、神ですね」

(影山さん、その他スタッフ一同、爆笑)

後藤「いやいや、“どうしてこんなにも誰かを楽しませるためにいろいろ考えて、自分の時間を差し出して行動できるんだろう?”って思って話を聞いてると……女神なんじゃないかと(笑)。マザー・テレサのような感じがしますね」

影山「はは(笑)。『RunGirl★Night』も一緒で、自分でもホント、なんでこんなに大変なことをするんだろうって毎回思うんですよね(笑)。でも、それがすごく楽しくって。最初はボランティアスタッフで参加した人が、走っている人をみて刺激を受けて、次はランナーとして参加していたりして。走る人だけじゃなくて、みんなの目がホントにキラキラしてるんです」

後藤「でも、協賛金のマネタイズとかって、一番心が折れるんじゃないですか? なんか……想像しただけで、胸の奥がギューってなりますもん(笑)。僕も昔、会社にいて営業をしていたことがあるので、飛び込むときのグワーっていう緊張感とか、とてもよく分かります」

影山「つらいなって思うことも多いんですけど、ただただ、楽しそうに楽しそうに“絶対満足する結果を生みますよ!”って自信を持って言い続けていると、向こうからお金が歩いてくるんですよね」

後藤「そういうところが、またいいなと思います。影山さんが本当に神様になっちゃうと、スピリチュアルなだけの活動になってしまう。でも、『RunGirl★Night』はちゃんと経済と接続して人もお金も動いている。それが都市とか街とかに、ちゃんと根を張っているように見えますよね」

影山「それで言うと私たち、お台場に人を呼ぶためのマラソンコースを監修したりもしているんですよ」

img005

お台場エリアをランニングスポットとして
盛り上げるため、ランガールがコースの
監修を行っている

後藤「それはすごいですね」

影山「『RunGirl★Night』は毎年お台場で開催しているんですけど、最初の年に許可をいただくのが大変だったんです。許可を得るためには東京都の後援が必須で、実績のない人は後援してくれない。それに、まずは東京都の出先機関の外郭団体に主催に入っていただかないといけない。でも、その団体からは、“もうひとつのあるお台場の有力者団体が共催してくれるんだったらOK”と言われてしまって……。私たちは実績や経験もそれまでない単なる個人の団体だったので、無理もないことかと思いますが(笑)。もう、毎日電話したり、話をしに行ったりと必死に交渉しました。そしたら、東京都の方が先に“このイベントは後援する価値があると思います”って言ってくださったんです。そうして、もうひとつの企業さんも共催を決めてくださいました。初めての開催だったにも関わらず、東京都の方が応援してくださったから『RunGirl★Night』は実現したんです」

後藤「いろいろな苦労があってのことなんですね」

影山「大会が終わったあとに東京都の方から“皇居にランナーが集まりすぎて困っている”という相談を受けました。それがキッカケで私たちランガールが、お台場ランニングコースの監修をさせていただくことになったんです。東京都の職員の方々と何度も何度もお台場を走ったり、ホテルにランニングステーションを設置するためのサポートに入ったり。私たちとしては、東京都さんが応援してくださったから開催できたので、お礼のつもりで協力をさせていただいたんですね。そうしたら、今度は東京都の職員の方々が“ランガールさんのためなら、僕たちなんでもしますよ!”おっしゃってくださって。その後の大会運営でも、東京都さんがバックアップしてくださるおかげで、色々なことを進めるのが楽になりました。この関係も、気持ちだけでつながっていて、本当にありがたく思っています」

待っているだけじゃ、何も起こるわけがない

img006

2011年3月、モナコマラソンを完走した後に
ゴール後のビール!

――影山さんのお話を聞いていると、前向きなパワーを維持することで、色々なものが生まれてるなと感じます。

影山「そうですね、少しずつ、楽しい渦ができていくのを実感します。Twitterのプロフィールにも書いているんですけど、ワクワクを生み出すのが好きなんです、私。ワクワクって言葉にすごく弱くって。人をワクワクさせることで、自分もワクワクしたいんです、それが生きる原動力というか。“面白いことないなー”って言う人って多いですけど、“待っているだけで何もしなかったら、何も起こるわけがない”と思っていて。だから、みんながワクワクするようなことをいつも企画していたいんですよね」

――昔から“ワクワク好き”だったんですか?

影山「そんなことないです。多分、走り始めてからだと思います。もっと厳密には、駅伝部を始めてからかな。だから、5、6年前からですね。そこで初めて、メンバーのある人に“桐子さんはワクワクをつくる人だよね!”って言われて、周りの人から見るとそんな風に映るんだって気づいて。“私の企画したもので人がワクワクしてくれるのなら、こんなに嬉しいことはない!”と思うようになりました」

――今後のRunGirl★Nightのビジョンを教えてください。

影山「とにかく、継続していきたいなと思っています。そのためには、私たちも変化していかなくちゃならないと。みんな、どんどんガールじゃなくなっちゃうので(笑)、どんどん若い人を育てたくって。ここ数年で学んだことがとても大きいので、それをきちんと共有して下の世代に伝えていきたいですね。私がいなくなっても、今のこの楽しいつながりが終わらないように。協賛金集めなども私ひとりで担ってしまっているので、そういう部分を引き継いでいけるような、若い人を発掘するというのがテーマかな。内容については、みんなに楽しんでもらい続けるために、いつも新しい驚きが必要だなと思っています。大会って、そういうところはあまり求められていないのかもしれないですけど、常に新しい提案をしていきたいし、前の年よりも必ず良くしていきたいと思っています」

後藤「良いですね」

影山「あとは、毎年何かテーマをもたせたくて、今年は“You are the shining star その姿が力になる”というタイトルを付けました。走ることって、自分自身のために走っているはずなんだけど、走っているその姿が人を勇気づけたりもする。“走っているあなたは星みたいなものなんだよ”っていうことを、メッセージとして伝えたいですね。キラキラしていることで、自分の身の周りの人を勇気づけたりする、そんな力があるんだよと」

後藤「お金ではなくて、人のためっていう気持ちで、ここまで行動できるのは本当にすごいですね。こういう贈与の精神が、これからの社会を変えていくんだと、僕は思っています」

影山「それは、後藤さんも一緒ですよね。まさに、この媒体がそうですもんね」

(2012.10.3)
photo02
Ken Yokoyama

影山桐子(かげやま•きりこ)

女性向けWEBマガジン『ELLE ONLINE』に12年間ファッションエディターとして携わり、独立。ランニング好きが高じて、ファッション、ビューティ、メディア業界の女性ランナーによる企画集団『ランガール』を設立し、女子による女子のためのラン祭り『RunGirl★Night』を主催。今年の9月に第3回目を迎える。プライベートでは、100人以上を擁する駅伝部を主宰。その他、餃子部、ボルダリング部、山ごはん部なども企画している。