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THE FUTURE TIMES Talk&Live @KLUB COUNTER ACTION

なるべく現地でお金を使いたい

後藤「今、一年半くらい経って、被災地はどのような感じですか?」

KO「南三陸町から上、宮古とか、市が大きいところは市の力があるから、復興というか、片付くのが早いかな。夏に町を車で走ったときには、建物の基礎とかは残っているんだけど、雑草とかが生えてて、もう分からないんだよ。よく見たらそこ、全部家だったんだよね。俺は最初の状態を見ているから、分かるけど。気仙沼とか、釜石(※8)とか、まだグチャグチャなまま建物が残っているし…」

後藤「はい…」

KO「南三陸町が最初に入った場所で、すごく強烈だったんだけど…。あの町、ダメじゃないかなと思った。本当に何もかもなくなってたから。壊滅っていうか…。上のほうは学校とかがあって、山があるんだけど、下のほうが100%何もなくなってたから。それでも最近、『復興商店街』とかね、プレハブがでできて。『ゴッサン基金』と『NBC作戦』でも南三陸の『復興商店街』から物資をね」

後藤「Tシャツとかを買いましたよね」

KO「そうそう。下着とかね」

後藤「そうですよね。被災地で使うのが一番良いんじゃないかってことで、何十万円かそこで使って」

KO「俺は南三陸でも、3、4カ所の仮設集落に物資を送ってて、その人たちに、そこの復興商店街に行ってもらって、勝手に自分の好きなもの選んでもらったの、集落ごとに。『好きなもの買ってくれ』って言って。それでお店の人から『60万円でした』と(笑)」

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後藤「請求書が来て」

KO「それをゴッサン基金で払ってくれて。『NBC作戦』ではレトルト食品の募集をずっとやってるんだけど、そうじゃなくて、お金が貯まったらなるべく現地でお金を使って、現地の人にやってもらおうと。ほら、買い物をする楽しみもあるじゃない?」

後藤「そうですよね。ストレスの発散にもなりますよね」

KO「この間もウチの募金が結構溜まってたから、冬だし、ガンガン買って良いですよって言ったら、とんでもない金額の請求がきてたもんね」

後藤「でも、現地で使うのが良いかもしれないですよね。作りましょうか?僕が地域通貨みたいなもの。1ゴッサンみたいなのを作って配って、自由に使ってもらうとか」

KO「洒落にならないけどね(笑)。だって、仮設住宅に入っている人が多過ぎるからね。そんなにね、こっちは何十万、何百万使いましたって言ってやった気になってもさ、——よくやってるのは豚肉を買って送ったりだとか、そういうのもさ、何トンとか買ってさ。ブラフマンのチャリティTシャツの売上げを『豚肉1トン作戦』っていうのに交えて、120万円分豚肉を送ったのね」

後藤「それは凄い量ですね」

KO「一家庭に1kgって考えて、1200世帯にしか配れないの。これだけ『ヨッシャ今回やってやった!』と思っても、1200世帯だからね。(全体では)何千とか何万世帯でしょう?そういう葛藤があるよね、支援をやっててもさ。『ありがとうございました』ってメールとか電話とか毎回来て、嬉しいけどね」

後藤「はい」

復興予算の使われ方に対する憤り

KO「AIR JAM(※9)のときが凄かったね。トラック一台分くらいレトルト食品が集まって」

後藤「逆にそういう、みんなのちょっとした想いがそうやって集まるなか、行政が滅茶苦茶な復興予算の使い方をしているという報道がありますよね。あれ、本当に腹が立って…」

KO「そうなんだよね。血の涙が出てくるよね。腹立つでしょ、絶対」

後藤「ここ1年半の活動を馬鹿にされているような気分になります。ガッカリしましたよね」

KO「本当にさ、こんなにおかしい国はないよね。行く度に仮設住宅とか、お付き合いしてるお婆ちゃんのところとかあがらせてもらって、泣いちゃうから今言えないけど、いろいろな話を聞いててさ。あの街並、——街並じゃないか、元街並ていうかさ、凄いからさ、何もなくて。あれを見ててさ、復興予算の一連のやり方には激しい怒りが芽生えてくるよね。これは完全に言っていいことだと思うけれど、ぶっ殺す的な…」

後藤「会場は引いてますけど(笑)。憤る気持ちは僕も同じです」

KO「本当に、怒ったほうが良いと思うんだよね、もっとさ…」

後藤「例えば、海外の原発を建てるための断層調査に使うとかって、もう、復興予算としてはどうにも説明つかないと思うんですよ」

KO「原発の事故でどれだけのことになって、沢山の人たちが困っているのに、この期に及んで原子炉を売るためのことなんだよね」

後藤「そうなんですよ」

KO「原発の話はムキになったら朝までかかるからね(笑)。南三陸町とか山田町(※10)とかの仮設に入っている人には、『最初は2年で仮設を出ないといけない』って話を聞いてて。1年半くらい経って、この間の夏にまた行ってきたときに『(2年で出るのは)これ無理でしょ。どうするんですか?』って聞いたら、とりあえず2年のところが3年に伸びたって。でも今の現状では、3年でも絶対無理だと思うし…」

後藤「確かに…」

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KO「地盤検査が全然進んでないから、自分の土地なのに家も建てさせてもらえない。当初は当初で、ズダボロな感じで、街がムチャムチャになったっていう絶望感があって。そのときも、宮古や山田町近辺だけでも自殺者の話をすごい聞いたけど…。だいぶ経って、俺らは気持ち的にも落ち着いてきたところもあるじゃない、やっぱり。だけど、仮設住宅を出られる見込みがない、ちょっとお金があっても借りるアパートもない。宮古でだからね。宮古って言ったら、結構デカいところなのね。だけどね、お金があっても入れるアパートがないんだって。マンションがない。コーポみたいなのすらない。まあその、国の予算の行き渡り方ってのも問題だけど、何でだろうって思うよね。そういうアパートとかを何とかするために急ピッチで作業しないのかなって」

後藤「何十億あったら、公務員住宅のようなアパートを建てられますよね」

KO「そう。町営住宅みたいなのをさ、一時的にでも造ったって、国の予算との比較でいえば、そんなに高額じゃないじゃない? 仮設住宅だって、変な決まりがあって…。南三陸町の戸倉ってところの高台に戸倉中学校ってのがあって、そこは高台なのに2階建ての校舎の一階まで津波でヤラれてるのね。そこが仮設住宅になってて、100世帯くらい住んでて。行けば必ず寄る場所なんだけど、『(毎度物資を持ってくるのは)もうキリがないから、支援物資用のプレハブ造らせれくれ』って言って。あるんだよ、土地とか、使ってない集会場とか。誰もいないの。せめて物資を置かしてくれって、インスタントラーメンでもレトルトでも置かしてくれって言ったら、ダメって言うんだよ」

後藤「そういう話よく聞きます」

KO「もう意味がわからない(笑)」

後藤「仮設住宅も徐々に空きが出始めていて、そういうところに被災地支援のNPO団体が事務所を作りたいと言っても、自治体によってはダメだと。貸すこともできないと。家賃を取れば収入にもなると思うんですけどね」

KO「俺も、なんとかしれくれないかって仮設に入っている人と話したんだけど、『行政が…』、『許可が…』って。そこで作戦考えたのが、駐車場とかはバカみたいに広くあるの。廃車みたいなワゴン車とかを何台も置いて、それを物置にしようぜって。まだ車は買ってないんだけど…」

後藤「はい」

KO「だけど、なんで俺たちが物置用のワゴン車まで買わないといけないんだろうっていうかさ…」

後藤「本当は現場の、町内会長でもいいし、交渉術に長けてる人とか、口うるさいおばちゃんとかでもいいんですけど、『アンタ、あそこ使わせなさいよ』って現場の担当者に言えばいい話じゃなないですか」

KO「なんて言うか、統率が取れてないんだよね」

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■注釈

(※8)釜石

釜石市。人口約3万7000人。岩手県の南東部に位置し、「鉄と魚のまち」として発展してきた歴史を持つ。東日本大震災では、死者885人、行方不明者176人。津波で2952棟の住宅が全壊。

(※9)AIR JAM

Hi-STANDARDが主催するロックフェスティバル。2012年は9月15日、16日の2日間に渡って、宮城県の『国営みちのく杜の湖畔公園』で行われた。

(※10)山田町

下閉伊郡山田町。岩手県の沿岸中部に位置している。自然環境が豊かで、山田湾はカキやホタテの養殖が盛ん。東日本大震災では、死亡者789人。全体の約4割に当たる2762棟の家屋が全壊。