HOME < 子供の笑顔が集う場所 | Connecting the dots 福島からの言葉 vol 4

子供の笑顔が集う場所| Connecting the dots 福島からの言葉 vol 4

言葉にしないだけ多くを負っている

去年の12月、『ふくしまインドアパーク郡山』が先にオープンしており、南相馬園はそれに次いで設けられたふたつ目の施設だ。フローレンス代表の駒崎さんは、設立の経緯について次のように語ってくれた。

「妻が福島出身で、実家が半壊状態になってしまって、家族がこちらに避難してきたんです。その受け入れから僕の3・11は始まっているので、まったく他人ごとではないんですよね。身内がボロボロになっているのを目の当たりにして、これは何か動き出さなきゃいけないと強く感じたんです」

その後、奥さんのお友達からのメールで「外に出られなくて、子供達のストレスがたまっている」という事実を知ったのをきっかけに、このインドアパークのプロジェクトを立ち上げた。

「最初の郡山園は僕たちが主導でオープンさせたのですが、南相馬園は違うんですよ。郡山園を見た南相馬の保育園の先生が“是非、南相馬にもインドアパークを作りたい”と、わざわざ東京の事務所に直接訪ねてきてくださったんです。それが出発点なので、パークの運営自体も地元の方々と相談しながらやっているんですよ。地元の内発的な動きから生まれたこの南相馬園は、これからの希望の象徴だなと思いますね」

南相馬園の開設に協力した地元ボランティアの人々はその後、市内の高見公園の除染と整備をするなど、独自のコミュニティへと発展して活動を続けている。自分たちの意志で踏み出して、確かな成果が生まれた。それが自信となり、誇りとなって、新たな一歩に繋がっている。“これからの希望の象徴”という言葉は、決して大げさな表現ではない。

img001

現在、南相馬園には3名の現地スタッフがいる。そのうちのひとり、鈴木亜恵美さんは南相馬の出身だ。

「ここで働くのは楽しいです。こんなにも子供達と一緒になって純粋に騒げるんだなと、新しい自分に気づけました。本当に、ここは素敵な遊び場ですよ」

鈴木さんは同時に、もどかしさがあることも教えてくれた。

「自分と同世代の若いママたちは、あまりここを利用してくれてないんですよね。そもそも、南相馬に戻ってきたいと思っている人が少ないんです。避難先での新しい生活が定着してきているし、こっちはやっぱり不安だし……」

南相馬の人口は、震災前と比較すると4割ほど数を減らしている。特に若い層の減少が目立つそうだ。町の将来に困難が立ちはだかるなか、この地で生活を続けることを選んだ人々も大勢いる。この施設の2階に設けられた『希望のゼミ』という無料学習スペースで、土日に中高生の勉強を見ている水口隆さんは言う。

「中学生は大体6割くらいは地元の学校に戻ってきていますね。年齢が下がるほど、その割合は少なくなります。中高生はこれから受験期に入りますから、早めにここを利用してほしいなと。なかなか勉強に集中できる環境、少ないと思うので」

スタッフさんにお話を伺っている最中に、姉弟を連れたお母さんが来園してきた。入るなり、ブランコに飛び乗る弟。その後についていって、優しく背中を押してあげる姉。キャッキャと楽しげにはしゃぐ声が、園内に心地よく響き渡る。

「子供達、プールには入れるけど、海はまだ怖がるんですよ」と、お母さんが話を聞かせてくれた。元々の自宅は相馬市内の浜の近くにあったが、津波で流されてしまい、今は市内の仮設住宅で生活しているそうだ。ぎゅっと、ここの現実に引き戻される。

「同級生も、何人か流されているんですよ。子供達、言葉にして吐き出し切れていないだけで、もっと深く傷ついている部分があるんだろうなと思います。津波がトラウマになって、内陸部に転校した子もたくさんいます。うちも少し考えましたが、こちらの友達と離れるのもつらいだろうから。こうして、楽しそうに遊んでいるのを見ると、ホッとしますね。こういった子供達のための施設が、今後もっと増えてくれることを願ってます」

ふと気づくと、姉弟がカメラマンを追い回していた。いつの間にか、おにごっこが始まっていたようだ。決して明るい話をしているわけではなかったのに、思わず顔がほころんだ。少し開放的な場所さえあれば、子供達は笑い転げる方法をいくらでも掘り出してくる。そして同時に、見ている大人も笑わせてくれる。そうやって笑顔と希望のたまり場になっているインドアパークは、紛れもなく尊い存在だと、この瞬間に強く感じさせられた。

『ふくしまインドアパーク』、そこに繋がる人々の言葉

ctds
ctds
ctds
ctds
ctds

NPO法人フローレンス

img_florence

たとえば、小さな子供が熱を出してしまうと、保育園では預かってもらうことができなくなってしまう。従来の考え方でいけば“子供の面倒は親がみるべき”と考えられがちだった病児保育という課題に事業として取り組むフローレンス。この課題解決が、ひいては“仕事と子育ての両立可能な日本”の実現に繋がるという考えで様々なサービスを提供している。
http://www.florence.or.jp/

ふくしまインドアパーク南相馬

img_indoorpark

福島県南相馬市原町区錦町一丁目125番地
TEL:0244-26-9984
『NPO法人フローレンス』が運営する『ふくしまインドアパーク』。現在は郡山園と2拠点体制で開園中。イベントも多数開かれ、子供を外で遊ばせることに不安を感じる環境にある地域の親たちの意見を取り入れながら様々な遊びの時間と場所を作り出している。
http://fukushima-indoorpark.jp/

前のページへ |  1  |  2