HOME < 『THE FUTURE TIMES』Gallery & Live 2014レポート

『THE FUTURE TIMES』Gallery & Live 2014レポート

Talk Live

安田「昼の部で、2012年の写真展と今回の写真展では意味合いが違うという話をさせてもらったんです。やはり、今起こっていることを今伝える、ということは、12年の写真展のひとつの意味合いだったと思うんです。ただ、『未来について語ろう』という言葉どおり、今撮っている写真は未来に手紙を書いているようなことなのかなって気がするんですね。日々、風景が変化していって、私たちは震災前の南相馬の風景を知ること、直接目で見ることは出来ないんですけど、日々刻々と変化していく中で、どこまで波が来て、どこまで瓦礫があって、がどんどん曖昧になっている。もしかしたら今記録を残すということは、次に大きな災害が起きた時に次の世代を救う可能性が1%でもあるかもしれない。だから未来への手紙のようなものに、写真の意味合いというものが変化してきているのかなと思います」

後藤「もちろん、そういう意味もあると思います。それを含めて『THE FUTURE TIMES』を発行しているので、少しは役立ててもらえたらっていう願いもあるんですけど。ただ僕は今回の特集というのは、もう少し今、現在に訴えかけたい想いがあります。『ちょっと早くない、みんな?』、『何かを置いてくの?』っていう。民主主義は多数決だとか言う人がいるけれど、違うよねって。理想的な民主主義って、著しく困っている人をなるべく見逃さないためのシステムであってほしいと僕は思ってるんですよ。困ってる人がいるけれど多数決のラインより少ないから置いていこうっていうのが民主主義ではないと思うんです。だから、やっぱりこのペースで進んでいくのが本当に正しいかを話し合うために、いろいろな町や市、国に、議論の場所があるんでしょって思うんです。でも、お金の話ばかりしてるっていうか。お金のことは無視できないけれど、言い換えれば“どこの土建屋にいくら落ちる”とか、そんな類の話ばかりしてるような気がして。本当にそれでいいのかなって。日本中をコンクリートで固めるだけでいいのかなって」

佐藤「わりと人間って忘れるんですよね。本当に忘れるんです。僕自身、震災直後の気持ちが薄くなってきていて。僕が撮っている写真は、もちろん誰かに届けたいという気持ちもあるんですけど、それ以上に、先ほど安田が言ったように、未来の僕への手紙、メッセージでもあるんですよね。その時の、処理できない感情とか、憤りとか、いろんなものを忘れてはいけないからこそ、シャッターを押して残していっているような気持ちがあるんです」

後藤「原発事故でも思うんです。上野さんや木村さんみたいな想いをしている人がいなくなるまでは、終わりなんてないよって。この事故が生んだ悲しみこそ、考えもせずに電気をたくさん使ってきた僕たちが意識すべきことなんじゃないかなって思うんですよね。放射線の数値だけを気にして、どこに放射性廃棄物を集めるかだけ気にして、いつ原発を再稼働するのかだけを気にして、そうやって進んでいくことじゃない。全然違うでしょって。本当の問題からはむしろ遠のいているようにも感じる。事故はそう簡単には片付かない、『燃料を取り出しました。はい、終わり』じゃないですよっていう。いまだに戻れない場所があるなんて、本来はものすごくおかしいことなんですよね」

佐藤「ものすごい不条理があるんですよね。誰にも理解できないような。ただ、現在っていうのは、過去の未来なんですよね。今の行動が未来に繋がるように。現時点っていうのがどこから来たか、それは過去の僕たちの行動の積み重ねだと思うんですよね。昼の部にゲストで来てくださった木村さんが、家族を亡くされて今でも御遺骨を探されている方が、それだけのことがありながらも、本当の本当の問題は、『それぞれの心の中にあるんじゃないのか?』って仰っていました。本当にそう思うんです。本当に性根が腐った人間というのも、中にはいるのかもしれない。では、いるとしても、たとえばなぜそういった人間が権力を持つ立場に立っているのか、僕たちがどういった社会の方向を目指しているのかっていうのは、僕たちはどこかで、選ばないということを含めて、選んできてしまったんだなと思いますね」

img016

安田「そういった数値とか情報に流されないための今回の写真展なのではないのかな、という気もしていて。たとえば渋谷の写真を通して、窓のようにして上野さんに出会って、木村さんに出会って。顔の見えない場所って、やはり想像の限界があると思うんですけど、たとえばあの写真を通して『ここは上野さんがいる場所だ』となると、出会った誰かのいる場所に人は想いを馳せるし、気をかける。だから、出会ってほしいという意味合いが写真にはあるのかなと」

渋谷「上野さんも同じようなことを仰っていましたよね。繋がりを通じて、笑顔というか、元気を取り戻したと」

上野「そうですね。笑えるようになりましたね。やっぱり人との出会いというのはすごく大事で。当時、僕があそこに残って人のイヤな部分を見てきて、人を全く信用できないくらいになっていたわけなんですけど、少しずつ、みんなが手伝ってしてくれることで、少しずつ変わってきて。あの津波は、当然辛い出来事ですけど、そこから生まれた出会いというのがすごく沢山あって。その出会いにすごく感謝しているんです。出会いに救われているような気がして。みんなにも救われているような気がして。震災後は辛い場所ではあったけど、そんな場所がきっかけで出会ったけど、そこで出会った人たちにはすごく感謝をしてますし、ありがたいという気持ちは強いです」

渋谷「なかなか福興浜団という集まりは、ユニークというか、変わってるというか、そういう人たちが沢山いてですね。ですから、もしかしたらパッと来て、パッと入れるような集団には見えないかもしれないですけど、たとえば花火のような催しの時に家族で一緒に行くなどすれば一番の出会いの場になるかなと思います。今年も8月に花火大会がありますんで。実現するにはいろんな人の支えもいるので、今日せっかくこういう場に来ていただいたんで、僕も協力したいと思うし、後藤さんには去年協力していただいて。今年も協力して準備を進めていきたいなと思っているんで、南相馬に行ってみたいけど、なかなかきっかけが…と思っている人がいたら、花火大会に行ってみるとか。Facebook(https://www.facebook.com/fukkouhamadan?fref=photo)とかもやっているので」

後藤「仙台からわりとさっと行けるんですよね。1時間半くらいで。なので、是非。僕の地元の花火大会では、田舎らしく、花火のスポンサーの名前を呼び上げたりして時間をかけて打ち上げるんです。南相馬の花火は本当に綺麗で、たくさん打ち上げますしね。感動しました」

上野「今年もぜひ来てください」

後藤「はい。これからも何度もお邪魔すると思いますんで、よろしくお願いします。残念ですが、そろそろ時間ですね。今日は、南相馬から上野さん、フォトジャーナリストの渋谷さん、佐藤くん、安田さんをお迎えして、トークをさせていただきました。みなさん、ありがとうございました」

cover