2011年3月。雪がまだちらつく中、岩手県陸前高田市へと車を走らせました。人口2万人ほどの小さな市の中で、死者・行方不明者数合わせて2000人近く。あまりにもたくさんの悲しみが、この街の中に渦巻いていました。市街地を見渡すと、そこにどんな営みがあったのか、想像もできないほど、あらゆるものがごっそりと波にさらわれた状態でした。私自身これが夢なのか現実なのか、朝起きるたびに確かめなければならないほど、信じがたい光景が目の前に広がっていたのです。
街の風景は日々変わっていきます。その中で私たちは、何を「置き去り」にしてはいけないのか、何を忘れずに次の世代につなげていくのか、日々考えます。 やがて新聞やテレビは「頑張れ!」という言葉で溢れ、復興へ、復興へという勢いが日を追うごとに増していきました。けれどもその裏には、あまりにも大切なものを失い、立ち上がることができずにいる無数の沈黙があります。1年という月日だけでは解決できないことが、人の心の中に重く残されています。どんな復興も、どんな希望も、死を悼む時間、亡くなった方々に思いを馳せる心を抜きにしては、脆いものとなってしまいます。
この展示は写真を通して皆さんが東北に生きる方々と“出会う"、そんな場であってほしいと願います。
studio AFTERMODE 所属 フォトジャーナリスト
2003年8月、「国境なき子どもたち」の友情のレポーターとしてカンボジアで貧困にさらされる子どもたちを取材。2006年、写真と出会ったことを機に、カンボジアを中心に各地の取材を始める。現在、東南アジアの貧困問題や、中東の難民問題、アフリカのエイズ孤児などを中心に取材を進める。2009年、日本ドキュメンタリー写真ユースコンテストにて大賞受賞。共著に『アジア×カメラ 「正解」のない旅へ』(第三書館)など。上智大学卒。
・岩手県陸前高田市
・岩手県釜石市
・宮城県石巻市
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