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渋谷敦志
「自分はいったいここで何をやっているのか」
震災直後の陸前高田で、悲しみに打ちひしがれている人にカメラを向け、何度そんな葛藤にさいなまれたことか。大きな無力感と共に東京に戻っても、その葛藤は消えなかった。明らかに冷静さを欠いた精神状態の中、写真家である自分、人間としての自分を問いただしながら、人生の分かれ道に立っているような思いにかられたものだ。今何もしなければ、僕はこれからも何もしないだろう、と。
まもなく僕は福島へ向かった。原発事故から3週間が経った頃だった。何を信じればいいのか分からなくなっていた僕はとにかく現場に立ち、眼を明け、耳をすまし、心を開いて、少なくとも自分にとって確かなことを見つけたかった。見て見ぬふり、わかったふりして、もうこれからを生きることはできない、そう思ったのだ。
そして今、僕たちはどんな世界で生きているのか。これからをどう生きたいのか。今変わらなければ、僕はこれからも変わらないだろう。だから今語るべきことを語りたいのだ。

Profile
shibuya
1975年、大阪府生まれ。高校生のときベトナム戦争の写真を見てフォトジャーナリストを志す。大学在学中にブラジルに渡り、法律事務所で研修しながら写真を本格的に撮り始める。London College of Printing(現ロンドン芸術大学)でフォトジャーナリズムを学ぶ。現在は東京を拠点に、世界の紛争や貧困、災害の現場で生きる人間の姿を写真で伝えている。1999年MSFフォトジャーナリスト賞、2000年日本写真家協会展金賞、2002年コニカミノルタフォトプレミオ、2005年視点賞・第30回記念特別賞など受賞。アジアプレス所属
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福島県南相馬市小高区の姿
福島県南相馬市
福島県双葉郡浪江町

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