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Interview デイブ・グロール

デイヴ・グロールが、「The Future Times」の取材に応じてくれました。
デイヴのレコードとの出会い、お気に入りのレコードについて、そしてこれからの音楽について。

――レコードとの出会いを教えてください。

デイヴ「最初に手に入れたアナログレコードはいろいろなアーティストが入ったオムニバス盤だった。ケイテルという会社のもので、テレビの通販コマーシャルで売っている当時人気のアーティストの曲がたくさん収められたコンピレーション・アルバムだった。俺が持っていたのにはK.C.&ザ・サンシャイン・バンドなんかが入っていた。その中で俺が一番好きだった曲はエドガー・ウィンターの『フランケンシュタイン』だった。ハード・ロックのインスト曲なんだけどね。ドラッグ・ストアーまで行って買って、家に持ち帰って聞いたんだけど、『フランケンシュタイン』だけ何度も何度も繰り返し聴いたんだ。ドラム・ソロもギター・ソロもキーボード・ソロもあってね。それがきっかけで自分もミュージシャンになりたいと思ったんだ。そのいろんなソロを聴いたのがきっかけでね。それが最初に手に入れたアルバムだよ」

――お持ちのアナログレコードの中で、思い入れのあるレコードを2枚教えてください。

デイヴ「自分が最も好きなレコードで最初に紹介したいのはザ・ビートルズのホワイト・アルバム(『The Beatles』)だ。子供の頃に、確か8歳か9歳のときに買ったアルバムで、史上最高のロック・アルバムだと俺は思っている。なぜなら今日がとにかく多彩だからだ。『ブラックバード』から『バック・イン・ザ・U.S.S.R.』に至るまで、ジョージ、ポール・ジョン、リンゴ、それぞれの個性を反映した曲が入っている。非常に美しくてシンプルな瞬間もあれば、不気味でミステリアスで実験的な瞬間もある。時代の先を行き過ぎた作品だと本当に思う。もし今の時代に出来たとしても、史上最高のアルバムと称えられるだろう。というのがホワイト・アルバムを好きな理由だ。続いて紹介する最も好きなレコードは、これもまたザ・ビートルズの『アビー・ロード』だ。俺はザ・ビートルズの大ファンなんだ。子供の頃はザ・ビートルズの作品を聴きながら楽器の弾き方を覚えた。ちゃんとした先生から教えを受けたことはなくて、レコードを聴きながら、それに併せてギターを弾いた。持っていたコードの教則本を参考にしながらね。『アビー・ロード』の最後の3曲は世界の歴史上、録音された音楽で最も美しい楽曲だと思っている。アルバムの他の曲ももちろん素晴らしいんだけど、『ゴールデン・スランバーズ』と『キャリー・ザット・ウェイト』と『ジ・エンド』はあり得ないくらい素晴らしい楽曲だ。というのが『アビー・ロード』を好きな理由だ」

――自分を取り巻く現場の状況について、たとえばデジタル化時代到来の前と後ではどのように変化しましたか?

デイヴ「デジタル化時代の前と後の違いというのは、利便性だけだと思う。今は、もし何かアイディアが浮かんだら、携帯を取り出してそこに歌うだけで簡単に記録できる。後でそれを聴き返してさらに発展させればいい。テクノロジーが入手しやすくなったことで、コンピュータ1台で家でも簡単に24トラックのデモ(仮録音)が録れるようになった。そういう新しいテクノロジーによる利便性は素晴らしいことだと思う。ただ、アナログの良さというのも絶対にある。アナログ機材ならではの音が恋しくなるし、愛着もある。テープ・リールが回るのを見るのも好きだし、アナログ録音だからこその音にこだわるのも好きだ。デジタル・テクノロジーを使って、演奏に後から手を加えるのは簡単だ。でもアナログではそういうわけにはいかないから、演奏をそのまま受け入れるしかない。そこがまたいいんだ。少しくらい不完全な部分があるから自然に聞こえて好きなんだ。ただアナログ機材というのは実用性に欠けることが多い。家でその場で何かをさくっと録音したいと思った時、24トラックの巨大なミキシング用コンソールが直ぐにあるわけじゃない。デジタル化以降の時代の利点はテクノロジーの進化による利便性だ」

――レコードへの想いついて、お聞かせください。何が魅力だと思いますか?

デイヴ「アナログレコードの魅力に関して言うと、最近娘にザ・ビートルズのアルバムを何枚かプレゼントして、レコード・プレーヤーを彼女の部屋に入れたんだ。彼女もザ・ビートルズのことは知っていたいたけど、これまでipadやipodやコンピュータでしか聴いたことがなかった。だから彼女にアルバムを見せたとき、それを実際に手にとって、ジャケットの曲名を読んだり、大きな写真を目にすることで、同じ音楽を聞くのでも全く違う経験になったんだ。彼女にとってより楽しい経験になった。スリーヴを開くことができたり、レコードに針を下ろしたり、レコードを持ち上げて、自分の手で持つことができたりして、より深い経験になった。俺もそういうことが今できなくなって淋しいと思う。何かで遊んでいる感覚は大事だと思うんだ。おもちゃみたいなものだよね」

――これからの音楽についての考えをお聞かせください。

デイヴ「音楽の未来は明るいと思っている。テクノロジーとその利便性のおかげでどんな人にも音楽が身近な存在になった。どんな若者でも家で音楽を作ることができる。自宅のガレージでアルバムを作ることだってできる。それをたったの1クリックで世界中に配信できるんだ。つまり、もっと音楽が増えるわけだ。必ずしもいい音楽が増えるというわけではないけど、純粋に音楽が増えるってことだ。テクンロジーの進化によってより多くのチャンスが生まれることは刺激的だ。ただ忘れちゃいけないのは、結局、人間が作った音を人は求めているということなんだ。俺もエレクトロニック・ミュージックを聴くのは大好きだし、シンセを使った音楽も大好きだ。でも突き詰めると、俺はいつだって人間味を感じるサウンドに惹かれる。作り手の性格が表れた音にね。だから音楽の未来は凄く明るいと思っている。誰でも音楽が作れるというのは素晴らしいことだと思う。最高じゃないか」

(2013.4.26)

デイヴ・グロールが初監督を務めた映画作品『サウンド・シティ-リアル・トゥ・リール』

1969年のオープンより、フリートウッド・マック、ニール・ヤング、トム・ぺティ、メタリカ、ニルヴァーナ、レイジ・アゲンスト・ザ・マシーンなど現代のロック史を築き上げてきた伝説的アーティストたちを虜にしてきた知られざるレコーディング・スタジオ『サウンド・シティ』。この作品は、『サウンド・シティ』の栄光と失われつつあるアナログ・レコーディングの美学とテクノロジーの発展めざましい現代の音楽に介在する"人間らしさ"について深く追求したドキュメンタリー映画。
cd

ALBUM 発売中
2520円
Sony Music Japan International

dvd

DVD 4月17日(水)発売
3980円
Sony Music Japan International

『サウンド・シティ-リアル・トゥ・リール』に寄せて

  • 「一回だけ、3、4日しか使ってないけど、慣れ親しんだ感じが残るスタジオでした。いろんなひとたちがいろんな音楽を録音してきた歴史があの雰囲気をつくり、それに影響されて自分の音楽が微妙に変わる。それがわざわざ遠くまで出掛けてレコーディングする理由です。ロスは遠いけど行ってよかったです」 ——奥田民生
  • 「僕らが胸を焦がしているのは“音源データ”なんかじゃなくて、人の手によって作られた“音楽”なんだということ」 ——後藤正文 (ASIAN KUNG-FU GENERATION)
  • 「自分の“ミュージック・ラヴァー度”が判別出来る胸アツな一本!」 ——日高 央(THE STARBEMS/ex-BEAT CRUSADERS)

サウンド・シティ - リアル・トゥ・リール試写会の動画公開!
2013年4月15日(月) メインコンソールにNEVE 8872を配備した最新鋭のレコーディング・スタジオ
「乃木坂ソニーミュージックスタジオ」にて試写会が行なわれました。
トークゲストとして後藤正文と喜多建介が出演。 司会は赤ペン瀧川先生。

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渡辺俊美

デイヴ・グロール

1969年生まれ、アメリカ、オハイオ州ウォーレン出身。ニルヴァーナのドラマーにして、フー・ファイターズのボーカル&ギター。フー・ファイターズに活動の主軸を置きながらもヘビー・メタル・プロジェクト『プロボット』やジョン・ポール・ジョーンズ(レッド・ツェッペリン)とジョシュ・オム(クイーンズ・オブ・ザ・ストーン・エイジ、カイアス)と結成した『ゼム・クルックド・ヴァルチャーズ』などサイド・プロジェクトでの活動も積極的に進める。フー・ファイターズでは、グラミー賞11回獲得、ニルヴァーナ時代も含めると世界中でアルバム・セールス約1億枚を記録するなど名実ともに現在の音楽シーンを代表するロック・アイコンである。