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松田“CHABE”岳二

アナログレコードの一番の魅力は、形がある。アートピース、みたいな感じなのかもしれない。

――わかりました。で、アナログに話を戻すと、CDには結局興味を持つことなく過ごしてきたんですか。

チャーベ「そうですね。CDはアナログがない場合にのみ買う程度で。あと2000年代になってiPodが出てきたのはデカいと思う。今考えると分岐はあそこですよね。あのとき、自分でも“アナログ面倒くせぇ!”って思ったんですよ」

――初めて!?

チャーベ「初めて思った(笑)。たぶん2002年とかかなぁ。アナログ全部iPodで持ち歩きたい、って思ったんです。もちろん結局はアナログ盤買うんですけど、ダウンロードの文化が入ってきて、それはパソコン持ち歩くような生活の中で理に適ってるんで、どんどん使うようになって。だから僕、CDっていうものをすっ飛ばしてますね」

――CDが不要と言われ始めたのも、iPodとiTunesの登場がデカいですよね。パソコンに取り込んじゃえば二度と開きもしないCDがある。その事実に自分でも愕然としたり。

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チャーベ「ね、結局CDはデータの器、フタを開けてみればmp3のクオリティの高いものが入ってただけで。そのデータはダウンロードできてしまう。あともうひとつ言えるのが、i Podが出てきてアルバムの概念がなくなってしまって。曲単位になるよね、シャッフルとか。今までCDを作るときは、曲順を練るのはもちろんだし、曲間の長さまで考えるのが当然で。ハイスタの場合すごい繋がってたりするじゃない? ああいうのが意味をなさなくなってきたなって。それはパソコンで聴き始めて自分がそうだったから。もう今、CDを作るときに曲間とかあんまり練らないんですよ。無駄だと思って。聴き方が変わるから作り方が変わるんだなと思った」

――聴くプロであり、作るプロでもあるチャーベさんは、その流れを否定してるようにも肯定しているようにも聞こえます。

チャーベ「や、否定はしないかな。便利だし、可愛いし(笑)。だから選択肢がひとつ増えた、音楽の聴き方の選択肢がひとつ増えたと思ってる。そうなると必然的に作る人の意識も変わってくる。作り方やパッケージの仕方が変わってくるのはしょうがない。便利になったから、その便利さに合わせていくとそうなったんだろうなと思うんですけど」

――アナログを愛しつつ、データの利便性は歓迎していこうと。

チャーベ「うん。やっぱDJなんで新しいものを取り入れていきたいし。実際CDJもよく使うんですよ。PCだけのDJだってやってもいいと思ってる。ただ、やっぱり今日は7インチだけでDJしようとか、そういう楽しみが大きいんですよね。“今僕はこういうことに興味があって、このスタイルでやるのがクールだと思いますよ”っていうプレゼンテーションの意味もある。特に僕がやるハコは小さいとこが多いんで、“この曲なに?”って聞きにくる子が多いんですよ。そのときにちゃんと盤を見せてあげられる。“これだよ、いいでしょ”って。それが今やってるエデュケーションかな」

――なるほど。では最後に、アナログレコードの一番の魅力とは。

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チャーベ「なんだろう……形がある、ってことかな。アートピース、みたいな感じなのかもしれない。ジャケット含めて。正方形で、もうそれがひとつの作品だよね、って思います」

――CDだって正方形のジャケットですけど、何かが違う?

チャーベ「……もう取り憑かれてるんじゃないかな、この形に(笑)。あと、CDが出てくる前から買ってたレコードがもう山ほどあって、今さらこれを全部売ってしまうとか考えられない。もうライブラリじゃない? だってこんだけあるんだからしょうがないじゃん! っていう」

――ライブラリっていうか、人生の積み重ねがあるわけですからね。買うときにワクワクした記憶とか、その曲で泣いたり笑ったりした経験も含めて。

チャーベ「そうだね。うん。結局僕はそれを伝えたいのかな。DJやるのもレコード買うのも、楽しいよ、宝探しみたいだよって伝えたいだけかもしれない。たとえば女の子に好きなアルバムをプレゼントするのとか、別にその子がプレーヤー持ってなくても、この形をプレゼントすることがすごく素敵なんだよって思いますね」

(2013.7.22)
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The Specials 『SPECIALS PLUS』

普通は『MORE SPECIALS』だけど、これは『PLUS』なんですよ。フランス盤。これぐらい好きなアルバムは各国の盤が欲しくなる。サマソニで来日したメンバーに見せたら、珍しいの持ってるなって驚いてた。全員にサインもらえるのも、大きいレコードジャケットの醍醐味だよね。

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Fairground Atraction 『Perfect』

好きな盤は中古で見かけるとすぐ買うんです。そして人にプレゼントする。これも大好きな曲で、このシングルが入ったファースト・アルバムは今まで30枚くらい買ったかな。本人にサインしてもらったときは10代の自分に言いたかった。「お前いつかこれに書いてもらえるからな!」って。

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Chocola&Akito

松田“CHABE”岳二(まつだ“ちゃーべ”がくじ)

1970年、広島県生まれ。ソロ・プロジェクトのCUBISMO GRAFICO、バンド・スタイルのCUBISMO GRAFICO FIVE、キーボーディスト・堀江博久とのユニット、ニール&イライザ、DJ、リミキサーとして活躍中。また、FRONTIER BACKYARD、LOW IQ 01のライブバンドMASTERLOWのサポートも務める。2001年には、映画『ウォーターボーイズ』の音楽を手掛け、第25回日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。渋谷Organ Banでのレギュラーナイト「MIXX BEAUTY」をはじめ、三宿web他、CLUBでのDJで現場を大切にした活動を展開。また、原宿でkit galleryを主宰。