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住田町長 多田欣一

最大の資源は水と木

—もともとは、地元の木材を活かそうと思って始まった事業なんですか?

町長「そんな立派なものじゃない。とにかく木材を売らなきゃならないと思ったんです。売るためには、木材の消費人口を増やさなきゃならない。日本は人口減社会ですので住宅もどんどん減っていきますが、山の木は日々生長しているので、受注バランスが崩れるわけですよね。山に手をかけた分の金額で売れないとすれば手を入れなくなるわけです。山林を持続的に回転させていくためには、しかるべき価値をもって輸出など対策をたてなければならない」

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—はい

町長「そこで私は中国に住田住宅を建てたいと思ったんですよ。ところが日本の杉やヒノキは中国の規格にない。柔らかすぎて強さがないと考えられているんです。そうしているうちに四川省で大地震が起こりました。ハイチ、ニュージランドでも震災が続いた。そこに日本の杉やヒノキで仮設住宅を1000棟、2000棟建てれば、すごい支援になるだろうと思ったんですよ。不要になっても、解体して焚き火にでもすれば、産業廃棄物は残らない。日本にはこんないいものがあるのに、なぜ石油製品で作ったものを支援として送り出そうとするのか、私は納得できないんですよ。日本の最大の資源は水と木だと思います。しかも持続するもの。とにかくこれを売り込む。そういう夢をもって始めたんですが、たまたま今回は足元で震災が起こったので“それいけ”ということになったわけです」

—地元の職人さんの気持ちが高まったり、産業として活気がでたんじゃないかと想像もするんですが

町長「そうだと思います、特に3年前までは住宅業界が冷え込んでいたのですが、今は次々注文が来るのを待ってもらっているようです。3年前を考えれば、こんな嬉しいことはない」

—住田町に、林業の後継者はたくさんいるのでしょうか?

町長「製材する工場には若い人がいますが、家を建てる職人さんの若手がいない。ただ、施主さんの問題も大きいんです。とにかく短時間で安く建てたいと、コンパネの家ばっかり作っているわけだから、大工さんが育たないんじゃなく、現場を作れる施主さんがいない。昔は家を建てることになると、大工の棟梁が木を切るときから一緒に山に入って、この木はどこに使うと頭のなかで計算していたんです」

—そうなんですか

町長「山の北側で育った木は北側に使う。南側で育った木は南側に使わないと800年、1000年もつ建物は造れないそうです。屋根の反りの部分も、雪で反った木を山で探してきて、製材するときも全部棟梁が指示していた。ところが今では製材所から出てきた木材を使うから、どこで育ったかわからない木をそのまま使うわけです。職人さんを残したいという気持ちは、みんな同じ。ただその腕を勉強させてくれる施主さんがいない。私も住宅産業の社長も、神社から今回の仮設住宅を発想しました。ここには気仙大工という、宮大工で磨きのかかった匠の集団がいて、神社を建てるときに“落とし込み工法”を用いるんです。板を落としこんでいるだけですが、地震にも耐えられる。やはり先人たちの考えたことはすばらしいんです。それを我々も活かすべきなんです」

—最後に、住田町の将来像というか未来のビジョンのようなものがあれば伺いたいです

町長「私はこの町の大きな資源も、山林と水だと思っているんです。木材は急に欲しくなったから手に入れようと思っても、50年60年かけないと手に入れられない財産なんです。これを活かしていきながら持続的にサイクルさせていくことのが、この町の生きていく方法だと思っています。いつか水にも挑戦したいと思っています」

長く厳しい東北の冬にぬくもりを

ペレットストーブとは、木材から出るおが屑などを圧縮成形した木質ペレットを燃料とするストーブです。地元の木材から作られる木質ペレットを使うことはエネルギーの地産地消への貢献であり、同時に森林整備への貢献でもあります。『LIFE311』では、支援金を活用して、木造仮設住宅へのペレットストーブ設置を進めています。

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(2011.12.16)
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