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伊勢谷友介

テクノロジーと人間の知恵と愛情で生まれる素晴らしい創造

後藤「他にはどんな新しいプロジェクトがあるのですか?」

伊勢谷「今、『元気玉プロジェクト』と並行して、山口県萩市でプロジェクトをはじめたんですよ。震災もあって、互いが互いに支えあう社会というのが少しずつリアルになってきていると思うし、今、動くのは本当にいい機会だと思っていて」

後藤「具体的にはどんな地域作りを?」

伊勢谷「今までも地方都市は、街の活性化のためにいろいろな取り組みをしていると思うんですが、僕らが萩に維新を起こすために、テーマに掲げたのは、『ガバメント 2.0』という概念なんです。これは2009年にティム・オライリーが提唱した言葉なんですが、考えて動くのは我々で、政府はそれを吸収して施行することを司る所、つまりプラットホームであってくれればいいという考え方です。そうすることで、自分たちの意見や想いがきちんと自分たちの社会に実行される社会を作ろうということですね。自分たちの生活に対して、必ずペイバックしていくように自分たちで決断していくこと。それぞれが自分で考えて、実行できる人になるということ。そうすることで、人の意識が上がってくると思っています」

後藤「はい」

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伊勢谷「そういうことに僕は興味があるし、僕らはみな、全体の中の一人だから、その力をちゃんと自分で発揮していくことが、それぞれ個人が生きる意味だと思うんです。本当の意味で人間が知恵を使えるようになって、“僕が変える側になる”という、それくらいの自意識を持っていけば、社会全体との関わり方が変わってくる。そして今、インターネットがあるから、そのシノプシスを自分から這わすことが可能だと思います。テクノロジーと人間の知恵が『こんにちは』と仲良くなって、そこに愛情が加わると、素晴らしい創造が生まれます。これはこの時代だからこそ持てる、次の人間のレベルアップであり、そのビジョンを持った上で、僕らはそこに突入していかないと、と思いますね」

後藤「本当にそう思います」

伊勢谷「そのためにも、ただ『やる』ってほざいててもしょうがなくて、やり方を考えなくてはいけないんですよね。つねに僕らはアイデアがあったら実行する方法を考える。ありがとうと言わないのに、思っているだけなら意味がないとかいう話もあるじゃないですか。僕らはそのつもりで、本当にいいことを思いついたら、やり方を考えて、一般の人でも動けることをどんどん実行していきたいんです」

後藤「良いですね」

伊勢谷「だからこれをやることで金を儲けたいわけではない。これをやることで国民のレベルが上がる。一緒にそれを押し進めることが、僕らのためじゃなくて、僕ら以外の人たちのためになって、それが結果、僕らのためになって、僕らの目的になる。“人類が地球に生き残るために”という目的にね。だから新しい考え方で横で繋がっていくことをどんどんやっていきたいと思っているんですよ。『元気玉プロジェクト』のシステムだって、僕が世界で初めてやっているわけでもなんでもなく、すごいいいアイデアでも同じことを考えている人は世界で千人くらいいる。ただ、それをやるかやらないの差だけで、別に俺がオリジナルの人になる必要はないんです。本当にいいものを押し進めていく、いいものを形にしていくという人の方が今の社会には必要です。オンリーワンのものを作る人ももちろん重要ではあるけれど、本当に役に立っている人というのは違うんだなということに気づいたときに、アーティストであるプライドは無駄だと感じて、一個人としてどう活動するかということになっていったんですよね」

後藤「僕がやっていることも、何も新しさなんかないですからね。でもやり方、使い方だと思います。さっきのネットの話とかも本当にそうだと思いますね」

伊勢谷「だから今僕らがやろうとしているのは、刀抜いて維新を起こすのではないんですよね。全体に対しての愛情を知恵で形にして、社会にどうドロップするかというのが僕らの言ってる維新だから、全然目線が違う」

後藤「東京で活動している僕が言うのもなんですが、地域分散型の社会になることはこれから大事だと思うんですよ」

伊勢谷「その方が大人も面白いんですよ。僕ら、どうせさんざん騒いだって飲んだって、そんなにとんでもないところにいかないじゃないですか。がっちり落ち込むことが起こるだけで。大人にとっては地方がそれぞれのキャラクターがついていると、あ、そこに行きたい、そこに行きたい、ってなるけど、今は画一化していて面白くないっていうのが一番しんどいですよね」

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後藤「そういう意味でも、伊勢谷さんがやっている萩のプロジェクトは面白そうですね。一度行ってみたいです」

伊勢谷「ホント、いっこいっこの積み重ねですけど、面白いですよ。僕も月に一度は萩に通いながら、かなり真剣にみんなと話し合っていますから。次の日本を作るために、まずは萩からはじめようっていうことなんですよ。彼らにはこう言っているんです。“維新を起こした町だった萩が、本当に維新を起こすその気概を持つ町として復活してください。まず日本を変えるための一番目になってください”って。彼らもそれに応えようとしてくれているし、そういう意味ではすごくエネルギーを感じます」

後藤「素晴らしいですね」

伊勢谷「ただ、大事なことは、諦めないこと。やっぱり大変なんですよね。最初に物事をひっぱる人というのはそれなりに体力使うし、かなり痛めつけられることもある。だけど、それを一緒に耐えて、新しいものに変えていこうという心つもりは、みんなの中に生まれている感じがするんです。だって、今、この世界を背負って生きているのは僕達ですから。だから僕らがやらなかったら、僕らの下の世代の奴らが、“お前らホント何やってたの? なんで資源がなくなることわかってて使い切ってんの?”って言われますよ。でもそれは絶対言わせないって思ってる。“僕らの世代は頑張ってここまでした、あとは任せた!”って言って、僕は死にたいですね」

(2012.1.25)
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伊勢谷友介

伊勢谷友介(いせや・ゆうすけ)

1976年東京生まれ。東京芸術大学美術学部デザイン科修士課程修了。98年『ワンダフルライフ』で映画デビュー。その後、映画、ドラマなど数々の作品に出演。また02年監督作品『カクト』を発表し、12年2月18日には2作目となる『セイジ-陸の魚-』が公開される。
09年『REBIRTH PROJECT』を設立。現在、『元気玉プロジェクト』他、萩市と組んだ地域再生プロジェクト「萩・維新塾2011 HAGInnovation『論』」を進めている。
http://www.rebirth-project.jp/