HOME < 今泉亮平さん(再生可能エネルギー推進協会理事)

今泉亮平さん×後藤正文

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今泉「再生可能エネルギーを利用しなければいけない動機は、ふたつあったんです。ひとつは、気候の変動です。もうひとつは、石油の枯渇です。石油、石炭、ウランもそうですが地下資源というのは、人間が掘り起こし続ければいつかはなくなるわけです。今は、世界の人口が約70億です。これが、あと数十年すれば100億を超えると言われている。世界の生活水準もだんだん平均的に上がってきている。アフリカや南米の生活水準も上がると先進国並みのエネルギーが必要になってくるでしょう。そうなれば石油もどんどんなくなっていく。そこで、再生可能エネルギーにシフトしていけば、石油も使わなくなってくるわけです。だから、化石燃料と言われている石油、石炭、天然ガスをなるべく使わない方向で考えていかなければいけない。ところが、ここへきて第三の原発問題まで浮き彫りになってしまった。原発問題が浮上して、前者2つが隠れつつありますが、ここも忘れてはいけないことです。年間の使用量で考えると、あと37、8年でなくなる計算になるんです。そこまで持たないかもしれません。そういう時代が来るというのに、みなさん非常にのんきに構えていますよね。天然ガスにしても63年、石炭にしても218年。それくらいしかないんです」

後藤「その数字は、世界的な基準なんですか?」

今泉「これは、新エネルギー財団っていう、国の機関が出している数字です。だから、私の孫の代には石油はなくなるでしょうね。去年の10月に、IEA(国際エネルギー機構、先進20ヵ国が加盟)が、2006年にオイルピークは過ぎたと発表したんです。このニュースは世界中で大騒ぎになって、どこの国の新聞も取り上げたのに、日本ではどこも取り上げない。日本で話題にしているのは、探求意識のある個人のTwitterという状況。エネルギーナショナリズムっていう動きが始まってますけど、資源を持っている国は強いわけですね。そういう国もエネルギー資源を出さないようにしているわけです。あらゆる意味で、エネルギーは社会の基礎ですから、それが高くなったり不足したりするということは経済的に大きな打撃になるわけです。そこでヨーロッパのエネルギー政策としては、そういうことから“renewable energy”、“renewable source”、再生可能エネルギーを利用して維持可能な社会に作っていこうとしているんです。それが普及することによって、今度はサステーナブル、維持する持続可能な社会、地球の埋蔵資源を使わないで発展できるだろうという、そういう社会にしようというのがヨーロッパの考え方です。ヨーロッパでは2020年には、一次エネルギー(電気だけでなく、車、ありとあらゆるエネルギー)の20%を再生可能エネルギーにしようとしています。2040年には世界の一次エネルギーの50%、電気の100%を再生可能エネルギーにしようと動いているんです。そうしないと地球全体が持たない、共倒れしてしまうというのがヨーロッパの考え方で、本気で取り組んでいるんです。それは新しい産業革命なんですね」

後藤「なるほどね」

今泉「新しい産業に生まれ変わるわけです。そこにいかに大きな経済効果が出てくるか。まして、今までの既存のエネルギー産業、原発なんかは、三菱、東芝、日立という三社しか儲からないわけです。だけども、再生可能エネルギーというのは、みんな小さいんですよ。各県で何ヶ所も作らなきゃいけない。すると、たくさんの会社ができてきます。加えて、自然やゴミや作物が相手だったりするので、それごとに対処が違うので規格化できないんです。大工場のような、大量生産方式が通用しなくなるんです。一件ずつカスタマイズしていかなければいけないんです」

後藤「同じものがいくつもあるんじゃなくて、場所にあったものをということですね。そうすると、地方でも雇用が生まれるわけですね」

今泉「そうです。各地域に産業も生まれてくるわけです。ひいて言えば、自治の問題にもなってくるわけです。東京一点集中というのを壊すことにもなってくる。地方に文化が広がっていく可能性が大きくなってくる。これは単なるエネルギーだけの問題じゃないんです。社会のシステムそのものが変わっていく可能性があるんですね」

後藤「すごいですね。この話は地方に住んでいる若い子たちに、もの凄い夢のある話ですね」

今泉「自分が起業して大成功する可能性もあるわけですから。それを成功させたら、日本だけではなく世界にも持っていける話ですから」

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後藤「僕が思うのが、毎朝ウンコするじゃないですか。バイオガスってそれも使えますよね?」

今泉「使えますよ。だから、そういう捨てられるもの、家畜の糞尿や残飯なども全部そうです。ヨーロッパでは、そういう廃棄物からエネルギー作物っていう考え方になっています。日本でも、耕作放棄地、休耕田、傾向地、減反農地、そういう農地が何万ヘクタールもあるわけです」

後藤「僕らも地方にツアーに行くと、たくさん見かけます」

今泉「ありますよね。そういう農地にひまわりだとかとうもろこし、エネルギーになる作物を植えていくわけです。日本は、農業というと食物を植えるという考え方ですが、ヨーロッパでは畑で石油を作るという考え方です」

後藤「ひまわりの種から油を採って、残りも使うと」

今泉「残りかすもガスにしたり、肥料にしたり。そして、肥料は畑に撒くことによって化学薬品や農薬などは使用せずに、非常にいい循環が生まれるわけです。これがだから、江戸時代以前の自然の循環社会ですよね」

後藤「捨てるところがなかったわけですからね」

今泉「そうです。江戸時代は、お百姓さんが侍の屋敷はし尿がたくさん出るからと言って買いに来たわけですから」

後藤「そういうことになるんでしょうね」

今泉「逆に言えば、これからウンコが売れる時代になるかもしれないです」

後藤「それは錬金術というか、すごく面白いですよね」

今泉「面白いですよ。これからは、先が読める人が大成功しますよ。そういう大きな変革の時代を迎えると思います」

後藤「海外の再生可能エネルギーに関する会社の状況はどうなんですか?」

今泉「ヨーロッパでは再生可能エネルギーに関するいろいろな会社が出てきているので、雇用も生まれて、エネルギーの価格も競争していますね。そうなるように国の政策を決めていますね。日本では企業が談合してしまうので、価格競争もないから値段も下がらないわけですね」

後藤「再生可能エネルギーが普及しだしたら、家庭の電気代も下がりますよね」

今泉「もちろんです。各家庭が再生可能エネルギーで賄えるようになったら、電気は買わなくていいということになるわけですから。どんどん下がっていくでしょうね。それから再生可能エネルギーは、災害に強いというのは間違いない」

後藤「それはいいですね」

今泉「大元の大きなエネルギーをみんなで共有するわけではない、分散型ですから。再生可能エネルギーは分散していくのが重要です。ソーラーも風力もバイオもあること。太陽が沈んだらバイオガスを使うとか、お互いに補え合える関係にあることが需要で、どれは必要ないということはないんです。その土地土地に合ったものを」

後藤「畜産が盛んなところは、牛糞からバイオガスとか」

今泉「そういうことです。今ドイツでは、原発にして2基分をバイオガスで対応していますよ。6000〜7000件の農家が、畑で作ったとうもろこしや麦、それから牛糞や鶏糞を使って再生可能エネルギーを生んでいるんです。これを“糞力発電”なんて言うんです。牛4頭の糞から一件の家の電気が賄えるバイオガスが取れるんですよ。バイオガスとはメタンなんです。有機性のものをバクテリアが食べて、メタンに変えるわけです。それを人間が、層の中に入れて人工的にやろうとしているんです。そのバイオガスを作るドイツの技術を私が日本の業者さんに紹介して、そのガスプラントを開発している最中です」

後藤「そこに見学行けたりしますか?」

今泉「いいですよ。是非、見学に来てください」

(2011.8.31)
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今泉亮平

今泉亮平(いまいずみ•りょうへい)

1941年東京生まれ。戦災の残る東京で幼少年期、復興期に高校、大学を過ごし、高度経済成長期に就職。40歳で独立しドイツ企業の代理店業務をスタート。90年に廃棄物処理プラントに関わり、95年にバイオガスプラント業務をスタート。石油文明隆盛の中で生き、その贖罪として余生を再生可能エネルギーの普及を願い友人たちと2006年にNPOを立ち上げ活動中。孫が成人する頃の100%自然エネルギーの社会を夢見る。
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